(第1回)がむしゃらに経験していた

(第2回)いつもケイタさんが気づかせてくれる。

(第3回)想像することと伝えること

(第4回)観察

(第5回)わからないことが楽しい

(最終回)リロのために。

 


 

 

 

第5回
わからないことが楽しい

ルダイ

なみさんは絵がすごく上手ですよね。もちろん描くスキルがあるのからなのですが、僕はその表現の元となるナミさんのアンテナ、感性が特殊だなと思っていて。

 

ナミ

うん。

 

ルダイ

それこそ、コーヒー豆のことををまるで人のように話すのはヒロナさんだけかと思っていたんですのですが…ナミさんもたまにそれをしますよね。

「お豆がお湯で気持ちよ〜くなるように淹れないとね、急に驚かせちゃダメ」のような。

 

ナミ

そうだね〜。

 

ルダイ

ナミさんはとても思考する人ではあるのですが、意外と感覚派の一面も強いんですよねぇ。

その感じ方というのがきっとナミさんの接客やコーヒーへの向き合い方に大きく影響しているはずで、ナミさんを語る上でその感性の話は避けられないなと思います。

 

ナミ

そうなんだ(笑)。

 

ルダイ

特に、ナミさんは同じ景色を見ても僕に見えている以上の何かを感じ取っているような気がしていて。それを何と呼べばいいのか…エネルギーというのか…僕に無い感覚なのでうまく言葉に表せないのですが。ナミさんは「空」「海」「葉っぱの上の雫」などが好きですよね。

 

ナミ

うん。

 

ルダイ

そういった「普通にあるもの」からナミさんは何かを感じている。

他にも、以前ソールライターという写真家の、窓ガラスが結露で濡れ外の景色がボヤッとなった写真を見て「吸い込まれそうで怖い」みたいな話をされていて。なんだか特殊なアンテナを持ってるなぁと。

 

ナミ

あったねぇそんなこと。

 

ルダイ

あれはどういう感覚なんですかね?

 

 

ナミ

あの写真は、何があるかわからないのが怖いかな。ただの絵なんだけど、私には映像に見えるのね。常に奥に隠されてるものがあると思っちゃうから、その時にボヤッとしているものだと得体の知れない闇を感じて不安になちゃったり。

 

ルダイ

映像なんですね。

 

ナミ

映像。美味しいものを食べたり飲んだ時も自分の中で景色が浮かぶし。

 

ルダイ

「空」「海」「葉っぱの上の雫」にはいいイメージが湧くんですよね。どこに惹かれているのでしょう。色ですか?

 

ナミ

好きな色に反応するというのはある。空がピンクだったら見てないと思う(笑)。

 

ルダイ

ピンク好きじゃないですもんね。

 

ナミ

そして、自然現象というものが好き。雲とか雷とか。決まった形がないからね。毎日新しい輝きがある。この葉っぱにこの滴が今落ちてるから綺麗に見えるんや!とか、お前輝いてるな!みたいな。

 

ルダイ

自然ですか…。たしかに空も海も自然ですね。人が作った物より自然に対していい印象を感じることが多いですか?

 

ナミ

そうかな。人が作ったものはまた違う感覚かも。人が作ったものも好きだけど、プロが作ったものは良いものだというのは当然だから、自然に対して感じるようなワクワクドキドキはないかな。自然は何があるかわからないから、いろんな想像ができる。

 

ルダイ

なるほど。また出てきましたね、「想像」。つまり想像できること、つまり「分からないこと」がナミさんにとって重要なポイントなんですね。

 

ナミ

空は写真に撮ったらただの青い壁なのに、実はずっと向こうに天井があるわけではなくて。そういうことを考えると面白い。

 

ルダイ

最近聞いたラジオで誰か(Out of museum店主の小林眞さんという方)がおっしゃっていたことなのですが、「自然はすでにあるから分からなくて、分からないから面白い。人が作ったものは人の意図がどうしてもある程度予想できるので、自然と人間の作ったものは全く別種の面白さだ」と。

 

ナミ

そうなの。それに、自然も生きてるから、自然と会話できないのも悲しいと思ったりする。自然を知りたい。なんで海は塩があるのとか、なんでこの葉っぱのそこだけ黄色でそこは緑なの、とか。多分賢い人だと光のあたり具合が、とか言うだろうけど…。

私はそれだけじゃない気がして。だけどそれは解明できない。それが面白い。

 

ルダイ

あー、感覚ですね(笑)。とにかく空想するのがナミさんの得意分野であり、それがお客様のことを想像したメッセージカードになり、ナミさんらしい接客になり、あらゆる表現に繋がっていくんでしょうね。

 

ナミ

私は答えが決まっているのがなんで?って思っちゃう面白さを感じない。人の気持ちも「正解」のないものだからこそ面白いんだよねぇ。だから接客も好きなのかな。

 

ルダイ

やっぱり、できないことをできるようになりたいのと一緒で、分からないものを探りたいということですね。

 

ナミ

そうそう。わかることが目的じゃないかも。自分で探って、いろんな人の考えを聞いているのが楽しい。

 

ルダイ

空もただ「綺麗!」だけじゃなかったんですね。

 

ナミ

前は一人で考えるのが好きだったけど、リロのみんなは癖があるから、私の感覚を伝えると聞いてくれるし思いを言ってくれるから面白い。自分の感じたことを楽しめるし、みんなのことを知れる。

 

ルダイ

二つの楽しみ方をしていますね。それも正解がないからできることですもんね。

周年ではモクテルを作られるんですよね。そのテーマは「空」「海」。

なみさんの感性で知覚した「空」「海」を、しかも絵ではない新しい方法でどう表現されるのか楽しみにしています。

もちろん、絵もそのひとつですし。時も絵も。

 

ナミ

がんばります。初めて自分の独断と偏見で決めた世界観とか味を表現できるのがすごく楽しみ。めっちゃいやだけどめっちゃ楽しみ。

 

 

 

最終回「リロのために。」 へつづきます)

 

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