(第1回)未完成のまま進む

(第2回)巻き込まれたい。

(第3回)焙煎機とリロの味

(第4回)あくまで目的は「人」に向いている。

(第5回)焙煎士として

(最終回)深く深く、もっと拡げる。

 


 

 

 

最終回
深く深く、もっと拡げる

 

ケイタ

料理人も一緒やねんけど、「伝えられてない」ロースターってロースターじゃないなと思ってて。

 

ルダイ

ほう。

 

ケイタ

豆を美味しく焼けるだけではダメで、「人を呼べる」のが大事。言葉が適切なのかはちょっと微妙やけど。

 

ルダイ

いいものを作っても、届けられなかったらもったいないですもんね。

 

ケイタ

そやねん。そこの部分を、リロはチームやからみんなで伝えてくれたりすんねんけど、焙煎士自身もただ良い豆を焼いてるだけやったら焙煎士としての価値がないと思ってる。

 

ルダイ

ほほう。

 

ケイタ

コーヒーの美味しさ、面白さ、楽しさをいろんな方法で、一人でも多くの人に伝えられるのがいい焙煎士なんやと思う。

 

ルダイ

なるほど。もちろんバリスタを通して伝えることもあるけれど、それだけではなく焙煎士自身が伝えていくんですね。

 

ケイタ

特に、「コーヒー大好き」ではない人に伝えていかなあかんと思ってる。その中で、バリスタみたいに直接お客様とコンタクトをとって伝えることができない分、焙煎士は伝え方を考える必要がある。

 

ルダイ

たしかにお客さん視点で見ると、焙煎士はバリスタと比べて「遠い」イメージがあります。

 

ケイタ

うんうん。そこは遠くなればなるほど良くないと思う。「深める」ことは必要やけど、それで遠くなったら絶対あかんと思う。

 

ルダイ

そうですね。「伝える」ことに関連して、今年2月の「焙煎士中村圭太の究極の一杯」は新しい試みでしたよね。

内容は、ものすごく深い部分なんですが、それを焙煎士のケイタさん自らレシピ構築、抽出、プレゼンまで一貫して一人で行うという。これ以上ないほど丁寧に伝えていました。

 

ケイタ

うんうん。

 

 

ルダイ

あのイベントは長い間あたためていたものだったんですか?

 

ケイタ

やりたいという意思は結構前からあった。パナマのエスメラルダゲイシャを焙煎したいというのは初期から思ってて。

 

ルダイ

そうだったんですね!

 

ケイタ

でもその頃は色々なものが足りなくて。

あのイベントが成立するための環境が整うことが必要だった。その環境ができるまでにこれだけ時間がかかったっていうことやね。

 

ルダイ

なるほど。

 

ケイタ

まずは焙煎機。焙煎機のグレードが上がるほどいい焙煎ができるのは間違いなくて、ローリングを導入したことは大きな要因やった。

 

ルダイ

はい。

 

ケイタ

次にリロ珈琲喫茶が「コーヒーを深める空間」としてある程度成熟した、ということかな。喫茶もオープンしたての頃やったらあのイベントはできてなかったと思う。

 

ルダイ

はぁ〜なるほど。

 

ケイタ

あえて未完成のままスタートして、時間をかけながら作り上げてようやく「向き合う場」としてのハコができてきた。それからスタッフについても、僕メインでやっていたところからみんなの意識が上がり個性が開いてきたんよね。

後はお客様の意識も必要。オープンしたての7年前にあのイベントをやったとて絶対お客様は来てくれへんかったと思う。それが今回僕の究極の一杯を飲みたいと思って集まってくださったというのは、お客様の意識も少しずつ作り上げてきたということで。

 

ルダイ

そうですねぇ。

 

ケイタ

今までの積み重ねが形になったという意味で、「中村圭太究極の一杯」イベントは楽しかったね。またやりたいと思ってる。

今回の”WHY? 100 yen COFFEE”は全く別の形の「究極の一杯」かな。

 

ルダイ

そうですね、こんなに対照的な催しはあるのかというくらいベクトルが真逆です。

 

 

ケイタ

今回の”WHY? 100 yen COFFEE”も、ただ単に100円のコーヒーを作りましたというだけやったらマイナス効果しかないからね。

 

ルダイ

うんうん、スペシャルティコーヒー屋が100円コーヒー。 

 

ケイタ

今まで僕たちがやってきたこと、これから伝えていきたいことがあってこそ今回の催しが成立する。だから今までの経緯は大事なのかなと。

 

ルダイ

まさにそうですね。こういった催しは、過去を再確認して、これまでとこれからに向けての決意とをつなぐとてもいい機会ですね。

そして、過去と今と未来の繋がりを、自分たちで見つめ直すだけではなくお客様や世界中の人たちに伝えていくという。

 

ケイタ

そやなぁ。面白いよね。

 

ルダイ

ケイタさんは「”WHY? 100 yen COFFEE”のドリップバッグをどんどん周りの人に渡してくださいね〜!」と発信しています。

ここまで直球で「拡げてくださいね」と伝えることはなかなかないですよね(笑)。

 

ケイタ

そうやね。それも、ただ単にお願いするのではなくて、ほんまに今までの経緯や僕たちの根っこにある想いを伝えているからこそ。

 

ルダイ

今回のLCR7周年の機会にリロコーヒーのブランドブックを作ったのですが、その中でリロの構成要素(LCR・喫茶・Factory・OnlineShop)を「4つの遊び場」と表現しています。

この4つは「拡げる⇄深める」「コト⇄モノ」という2軸によって分類することができて、異なる性格を持った4つが近くに存在するからこそ、それぞれの性質や気分に合わせて好きな遊び場で楽しめることを意味しているんですね。

 

ケイタ

うんうん。

 

ルダイ

そして、この遊び場に最も必要なのは、一緒になって思いっきり遊んでくれるみなさんの存在なんです。そこで、”WHY? 100 yen COFFEE”では「この遊び場は楽しいよ、みんな参加しよう〜!」と全力で伝えている気がします。

 

ケイタ

そうやね(笑)。それはガンガン伝えていこうと思う。

 

ルダイ

いやぁ、本当に面白いですし、これからのリロが楽しみです。いろんな方向から遊び場を作って、楽しむ人がどんどん増えていくように頑張りたいですね!

どうもありがとうございました!!

 

ケイタ

ありがとうございます!

 

(インタビューは以上です。ここまでお読みくださった皆さま、ありがとうございました!)

 

 

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