WHY? 100yen COFFEE
コーヒーを拡げる、コーヒーを深める。
LiLo Coffee Roastersをオープンして7年が経ち、改めて自分自身の仕事をする目的を振り返りました。
僕の仕事の目的は”コーヒーを通じて人を楽しませること”です。
僕が今仕事をしている環境は、LiLoに居て、ロースターとして働いていて、スペシャルティーコーヒーを取り扱っています。
スペシャルティーコーヒーは、やればやるほど面白くて、知れば知るほど知識や技術を深く深く追求していきます。
どんどんどんどん深くなる。
でも、人を楽しませる為には、拡げることもとっても大切です。
スペシャルティーコーヒーをどんどん知っていく、深める。スペシャルティーコーヒーをどんどん知ってもらう、拡げる。
どちらも出来てこそ、コーヒーのプロです。
拡がるコーヒーって…?
では、拡げていくには何をすれば良いのか、それを考えました。拡げる為には、深めるの反対のことに意識を向ける必要があります。
今、多くの人が普段から飲んでいるコーヒーって何だろうか。それは、スーパーで売られているコーヒーやコンビニコーヒー、すなわち”安いコーヒー”です。ということは拡げていく為には、
【100円コーヒー】を作って、→これは【手段】
LiLo Coffeeから楽しいコーヒーを拡げる。→これが【目的】
ということをやってみようと考えました。
100円コーヒーを作ってみる。
そうと決まれば早速実行。
まず、100円コーヒーをリサーチしました。例えばコンビニコーヒーは超大量に販売出来ます。
あるコンビニでは、年間で”約11億杯”、1秒間に35杯を売る計算になります。スケールが全く違います。仮に、ざっくり1杯10円の利益だったとしても、コンビニのスケールだと年間110億円。
ものすごい金額です。
それらのリサーチを踏まえた上で、LiLoでも100円コーヒーを作ってみました。
とりあえずまず最も経費がかかっていると想定する、生豆の原価を抑えてみました。
通常、LiLoで使っている豆の”5分の1の価格”のグレードです。
これは、美味しくなかったです。
このままではお客様には到底お出し出来ません。
なので、少しでも美味しくなる様に、ハンドピックして、生豆のサイズと品種を揃えて、ダブル焙煎をしたりなどなど、”手間”をしっかりとかけてみました。びっくりする程、ハチャメチャに時間がかかりました。。
原価を抑えて手間をかけた結果…
そして完成したコーヒー。出来上がってみると、最初の生豆の量からなんと、”80%もの豆を除去”していました。
なんということだ。大ショックです。
「美味しいものをさらに美味しくする」訳ではなく、
「不味いものを美味しくする」為に80%の豆を捨てなければならないなんて。。。なんなんだそれは。
そもそも、コストダウンってなんだ。
結局めちゃくちゃコストアップしとるやないか。
結果、大失敗でした。
でも、すごく良い経験でした。普段から使っているスペシャルティーコーヒーに大感謝です。
改めてこの結果を踏まえて【LiLo Coffeeの100円コーヒー】をどんなコーヒーにするのか、結論付けました。
▼生豆のグレードはコンビニコーヒーより良い豆を使う。
(コーヒーのクオリティーを保つ為)
▼提供方法を”ドリップバッグ”にする。
(抽出をお客様にお願いする事で、その分の人件費を焙煎へと回せる為)
この2点です。
肝心のコーヒーですが、美味しさとコストのバランスを考え、合計5種類の豆をブレンドしています。
ブレンドは、ただ単に加えたい味のものを好き勝手に加えても、狙った味は出てくれません。全体のバランスを取ることを前提に初めて各豆の個性が発揮されてきます。この豆はこのブレンドのコーディネーターとして役割を発揮してくれています。
また、この豆はダブル焙煎を施しています。品種特有の傾向なのですが、通常通りに焙煎すると、この豆はハゼが来るのが極端に遅いんですね。味が未発達のままで、焙煎を深くしてしまい焦げついてしまいやすい豆なので、まず一度軽く焙煎をしてから、もう一度本焙煎ということをしています。
これらの豆をそれぞれ全く異なるプロファイルで、それぞれに適した焙煎をていねいに施しています。
そしてそれらの配合を何十パターンも混ぜて飲んでを繰り返し、アフターミックスでブレンドしています。
こうやってしっかりと”手間”をかけて作り上げました。
楽しいコーヒーをみんなで拡めよう!
今回のこの【LiLo Coffeeの100円コーヒー】の目的は、
【楽しいコーヒーを拡めること】
です。
だから、単品販売をせず、10個セット販売のみに限定します。
ぜひ、誰かにどんどん配って拡めてください、拡散しまくってください!みんなで楽しみましょう!
僕は、”美味しいコーヒーを知っています”。
だからこそ、美味しいを探求するだけではなく、プロとして美味しいコーヒーを拡める為に、色んな形を考えています。
今回、僕のイベントとして100円コーヒーを本気で作りましたが、やはりあらゆる面で工夫したり、時には我慢したりしなければ100円コーヒーを作ることは出来ません。
コーヒーをコーディネートすることが焙煎士の仕事です。焙煎する事という作業だけではなく、そのコーヒーをどんな環境でどんな人達とどんな楽しみ方をしてもらいたいか、それらを想像して、それを焙煎アプローチに反映させることで焙煎士としての価値が生まれると考えています。
これからも色んなコーヒーをご提案していきます。
LiLoと一緒に、僕と一緒に、コーヒーを楽しみましょう。
中村圭太