第5回
焙煎士として
ケイタ
今回の周年企画では「焙煎士の仕事って何なのか」ということをテーマに伝えたくて。
ルダイ
はい。
ケイタ
僕は焙煎士の仕事を、「コーヒーをコーディネートすること」やと思ってるんですね。
ルダイ
ほうほう、「コーディネート」ですか。
ケイタ
そもそもの品質がいい生豆を最高に美味しく焙煎するのは、ほんまに素直にポテンシャルを引き出すように焼いてあげたらいいので、言ってしまえば「誰でもできる」ことなんですけど。
ルダイ
そうなんですね…。
ケイタ
だけど生豆の品質が劣るコーヒーに関してはいろんな調整をする必要があって。
焙煎メソッド自体を変える必要があるかもしれないし、ちょっと豆に手を加えることも。
ルダイ
ほうほう。
ケイタ
その豆を見極めて適切な対処をあてがってあげることが焙煎士の仕事やと思っていて。
ルダイ
はい。
ケイタ
そういう、生豆の状態を見極めていろんな調整を施し、バリスタに届けるまでの「コーディネーター」という仕事を提示していけたらなと。
ルダイ
今までは、LCRでカウンターに立ち、楽しいコーヒーを直接お客様に伝えていくという役割が大きかったと思うのですが、最近はファクトリーで焙煎業務を行う時間が増えましたよね。
ケイタ
うん。
ルダイ
スペシャルティコーヒーをお客様に地道にお伝えし、面白い空気を生み出していた期間を経て、徐々に「焙煎士」としての仕事の占めるウエイトが重くなっているように思います。
今後のケイタさんの目標も「焙煎」に関するものが大きいですか?
ケイタ
そうですね、さっき話した通り焙煎士=「コーヒーをコーディネートする」ということが自分の中で腑に落ちたんよね。
ルダイ
はい。
ケイタ
バリスタがお客様の前に立ってコーヒーを伝えていく立場で、焙煎士はその前の段階でいろんなコーヒーを調整してバリスタや生産国の人に伝えたり。それが焙煎士の仕事だからそこに注力したいし、そう言うことだよってあんまり伝わってないと思う。
焙煎士は焙煎している様子を見せてかっこいいだろ、と言うのではなくて、バリスタの後ろにデデンと構えて、バリスタが何やっても焙煎士がいてるから大丈夫だよ、というお父さん的な存在だよ、と言うことを伝えられたらなと。
あとは焙煎世界一。チャンピオン。
ルダイ
おお!きましたね。
ケイタ
まず日本一になって、それから世界一。
ルダイ
その目標を現実的に考え始めたのはローリングを導入してからですか?
ケイタ
そうやね。ローリングがあったらできると思うので。まぁもちろん難しいことだけどね。
ルダイ
「焙煎士の仕事を伝える」と「焙煎世界一」。技術を高めながら、世間に広く発信していくということですね。
ケイタさんはリアルな場でのコミュニケーションだけでなく、毎日のinsta LiveやFacebookのコラムなど、さまざまな方法で「伝える」ことをされていますね。
ケイタ
そうやね。
ルダイ
かと思えば、これは僕がリロに入って強く実感したケイタさんの一面なのですが、ケイタさんは地道にコツコツ続けることをとても得意としていて。
その性質は、トライアンドエラーの反復が仕事である焙煎士という職業にすごく活きているのだろうなと思います。
ケイタ
目標を立ててコツコツやるのが好きなんよね。
ルダイ
まるで噺家や漫才師のようにワーっと人を惹きつける発信ができる一方、焙煎士としてひたすら豆に向き合い検証と改善を繰り返す。
先程おっしゃった二つの目標は、「焙煎」を中心にそれぞれ「拡める」「深める」と異なるベクトルを向いたものだと思いますが、これらの両方を違和感なく同時に追求できるのはケイタさんだからこそだな、と感じました。
ケイタ
おお〜!
ルダイ
焙煎士の仕事と聞いて思い浮かぶのは、やっぱり焙煎機を操作しているかっこいい場面ですが、焙煎していない時に何を考えて、どんなことをして、どういった難しさや楽しさがあるのか、ということはまだまだ知られていないですよね。
ケイタ
そうやね。
ルダイ
そういう見えにくい部分を、ケイタさんは日々伝えているんですが…。
ケイタ
いやいや、まだまだ伝わんないっすよ。
(最終回「深く深く、もっと拡げる。」へつづきます)