(第1回)髪の毛を切りに来ていない人がいるサロンの方が面白い。

(第2回)決断は流れとタイミング。覚悟はない。

(第3回)大切なことはスターウォーズが教えてくれた。

(第4回)コーヒーを楽しみ、街をつくる。

(第5回)自然にやってしまうことを才能として。

(最終回)楽しむことに貪欲。

 

  


 

第5回
自然にやってしまうことを才能として。

 

ルダイ

LiLo Coffee Roasters、リロ珈琲喫茶、LiLo Coffee Factory。さらに店舗を増やせばその数だけリロのコーヒーに出会う機会が広がるとも言えますが、現時点では、リロコーヒーの店舗をこれ以上増やす予定はありません。堀田さんは以前から “Small is Better” という言葉を使われていますね。この点について考えていることをお聞きしたいです。

 

ホッタさん 

僕たちのコーヒーだけを広めるならば、これから卸先さんとのパートナーシップをしっかり組んでいくことで解決できると思ってる。そして僕がやりたいのは「楽しいコーヒーを広める」こと。「楽しいコーヒー」となると誰がどう伝えるかが大事で、つまりバリスタの存在が重要になってくる。

店舗を拡大するためにはどうしてもマニュアル化しなければいけない部分が出てきて、結果的に一人一人が自分らしさを出せない状況になるよな。この解決方法が僕の中でまだ見えてないから、今は店舗を増やすことは考えていない。

 

ルダイ

なるほど。

 

ホッタさん 

「楽しいコーヒー」=「美味しいコーヒー」+「楽しい人、自分らしさを持ってる人」で、それを実現できてるのがリロのコーヒーやと思ってる。だから拡大するかしないかの問題ではなく…

 

ルダイ

自分らしく輝ける人と、それを維持できる環境が伴っているかが重要だということですね。

 

(2021年5月)BRAND BOOKの為の撮影会での一幕。本物のフルーツをぶら下げて撮影しています。 

 

ホッタさん 

そうそう。画一的で誰がやっても一緒であることを僕は楽しいと思わなくて。何に対しても、その人の色や温度が乗っている方が楽しいと感じる。人の色が乗っているものには予想していなかった感動が生まれる経験があるから、リロコーヒーにおいてもそういう部分を大事にしたい。

その上で僕が気をつけるべきは、さっきも言ったけどルール決め。マイナスをなくすことに注力して規則を決めすぎると、スタッフの「らしさ」が発揮されず、予想外の感動が起きないと思う。

 

ルダイ

なるほど。

 

ホッタさん 

人が自然とやってしまうことに才能が眠っていると思うから、それぞれの人が持つクセをプラス方向に最大化できるような環境を整えて、その結果として熱量や温度が伝わって感動しているお客さんを見たり、自分の熱が伝わることでスタッフが喜ぶのを見ていると僕も楽しくなってくる。

 

ルダイ

リロのバリスタはみんな個性があると言っていただけることが多いですが、それはほとんどが環境のおかげだな、とリロに入社して強く感じています。

堀田さんの目とセキネさんの尽力によって、スタッフ一人一人が元々持っている個性をさらに伸ばし、足りていない弱い部分にも向き合う環境を作ってくださいます。

特に、僕がここで働けているのは、堀田さんの人の見方があらわれた好例だと思います。僕はスタッフ募集もされていないタイミングでリロに二度目の応募をしたのですが、バリスタではなく、それまでになかったポジションを新しく作ることで採用していただきました。そんなことあるんだ、と。リロというか堀田さん、とんでもない方だなと思いました。

 

ホッタさん 

(笑)。バリスタとして応募したもんな。一回応募してきた時には保留にして、新卒のタイミングでもう一回バリスタとして雇ってくださいと来たな。

 

ルダイ

そうなんです。

 

ホッタさん 

応募してきた時に持ってきた手紙や用意してきた文章を見たときに、自分らしさというか「この子はこういう癖があるんやろな」という思考パターン、見せ方が分かった。ここを自然とできる子やったら、この自然を才能として捉えて、才能が人に伝わるように僕が持っていった方が生き生きするし、「飛び出す」と思ったんですよ。自然にできることは得意になりうる部分やから。そこがバリスタでは使えない武器だなと思ったから、「こういう形もあるんじゃない」と提案した。コーヒーを淹れることではなくコーヒーにこだわっているんだから、淹れなくても焼かなくてもいいじゃん、となるよね。

 

ルダイ

今の話を面接の場で言っていただいたのですが、本当に思いもよらない提案で、そしてずっとバリスタになりたいと思っていたはずなのに、自分でも意外なほどワクワクしてきたのを覚えています。僕自身が気づいていなかった性質や得意になりうることを見出していただき、驚きました…。

 

(2021年5月)リロコーヒーのバックオフィスチーム。上からルダイ、ホッタさん、セキネさん

 

ホッタさん 

この子やったらここを伸ばせばいいと決めると、さらなる発展性を確保するためにどういうゲームにしたらいいかと考えるのが楽しい。それは今までリロコーヒーにはなかった世界を創っていくことでもあって。僕にとっても新しい領域でその子が世界を拡げていったり、そこで楽しむお客さんが増えていく状況をどうやったら生み出せるだろうか。そういうことを、この人と一緒にやっていくと決めた瞬間から、ある程度のスピードと深さまで掘っていくのが僕の仕事。

 

ルダイ

ひえ〜…。

 

ホッタさん 

昔から分解するのが好きやねん、ものでもなんでも。時計とかおもちゃとか、よく分解して遊んでた。大人になってものがなくなってきたら人を分解して(笑)

分解したら、こんなパーツあんねやとか、ここの可動域、広!とかが見えてくるから、その部分を生かして遊びたくなるよね。

 

ルダイ

人も、コーヒーもですね。

 

ホッタさん 

これは僕のクセやから、自然にやっちゃうねん。

いいところも見える反面、悪い部分もめちゃめちゃ見えるねんけど(笑)

 

ルダイ

それを良いように生かしているんですね。

 

 

ホッタさん 

そうそう。生かしようやんね。自分のクセが人に良い影響を与えた方がいいじゃないですか。その人がのびのび成長できる環境を僕が用意することで、その人が輝き出して、その輝きにひかれて周りに人が集まってきたり、その人の熱量が伝播して周りの人も輝きたくなってくる。

マイナスを減らしてプラスもあんまりない人、正確に物事を段取りよくできる人を作り出してしまうと、予測可能やから不安はないけど、楽しみもない。そこに接した人にも反応が生まれない。予測不可能なことが起きる時に感動が生まれるから、予測不可能な状況を自分で創り出す。

 

ルダイ

個人のレベルでも突出した部分がある方が面白いですし、チームとしてもいろんなタイプの人が集まるほど予測不可能になっていき、コーヒー屋としても、いろんな価値観や好みのお客さんが集まるほど楽しいですね。

堀田さんが大事にしている「人の色や温度が見えること」「つながり」「多様性」「予測不可能なこと」「楽しいこと」といった事柄は、全て一本の線で繋がっているように思います。


 

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