(第1回)髪の毛を切りに来ていない人がいるサロンの方が面白い。
第4回
コーヒーを楽しみ、街をつくる。
ルダイ
リロコーヒーは現在3店舗(LiLo Coffee Roasters、リロ珈琲喫茶、LiLo Coffee Factory)とオンラインショップで構成されていて、それぞれが全く違うスタイルでコーヒーの楽しさを表現していますね。どんな狙いがあり、性格の異なる店舗を増やしてきたのでしょうか?
ホッタさん
一つの理由ではなくて、いくつか考えていたことや周りの状況が重なってる。これもタイミングやな(笑)
ルダイ
2018年にリロ珈琲喫茶をオープンさせたのを知った時には、一リロファンとして「リロが喫茶店をやるのか!」と驚いた覚えがあります。
(2018年6月)リロ珈琲喫茶プレオープン4日前。天井にシャンデリアを設置する。
ホッタさん
喫茶を作った時もいくつか要因が重なってる。まずバリスタのタイプについて、しっかりした接客を通してお客さんがゆっくりコーヒーに向き合える空間を提供したいバリスタもいれば、どんどん新しい楽しさ、美味しさを提供したいバリスタもいるなと分かってきていた。加えて、ちょうどその頃LiLo Coffee Roastersが混み始めて、ゆっくりできないよねという不満がお客さんから出てきていることも感じていて。
ルダイ
なるほど。
ホッタさん
自分自身、生活していてパッとto goでコーヒーが欲しい時もあれば、ゆっくり本を読みながらコーヒーが飲みたい時もある。そして喫茶店がどんどん減っていく日本のコーヒー業界に対して危惧を感じていた中で、心斎橋で長く続いていた僕の好きな喫茶店がなくなる知らせを聞いて、僕が継がなければと思ってん。
ルダイ
スペシャルティコーヒーを仕事にしている人の多くは、スペシャルティコーヒーの虜になり、もっと多くの人に知ってほしい、もっと拡げたい!というモチベーションを持っていると思います。リロ喫茶がスタートした頃はまだ学生でしたが、僕にもそういった思いがありコーヒー業界を目指していました。
喫茶店は日本に根付いたとても重要なコーヒー文化の一つですが、喫茶店におけるコーヒーは、あくまでもゆっくり過ごす時間の脇役的存在で、コーヒー自体にスポットが当たるイメージはありませんでした。
ホッタさん
そうやな。
ルダイ
だからこそ、リロが2号店として純喫茶スタイルを選んだことにとても驚きました。コーヒーの楽しみ方に関して無意識に引いてしまっていた線引きを軽々と越えられたなぁと。これは、きっと堀田さんがコーヒー業界の人間ではなく、常にアマチュアとして、コーヒーを楽しむ側の目線を持っているからだと感じます。
ホッタさん
うん、嗜好品やし、楽しむものやから。コーヒーは人生を豊かにするものじゃないですか。いろんな楽しみ方をした方がいいでしょう。
ルダイ
軽やかですねぇ…。
ホッタさん
どうやろうな(笑)
ルダイ
美容室LiLo in veve、リロコーヒーの3店舗、そして「餃子とリロと〇〇と」まで、リロは全ての店舗がぎゅっと密集していますよね。この距離感の近さには理由があるのでしょうか?もう少し離れた街、例えば梅田あたりに出店する構想はなかったのかなぁと。
ホッタさん
そうやな。お客さんとの関係性を深く、多くしたいからな。欲張りやけど(笑)
ルダイ
ほうほう。
ホッタさん
距離が離れていくと広くはなるけど、どうしても薄くなる。より自分達を理解してもらおうと思うと、近くに揃っていた方が温度感も伝わりやすいし、足も運びやすい。
同じようなコンセプトで同じ商品を提供しているお店であれば商圏を変えていくだろうけど、それはしたくないからな。そう考えると遠くに店を作る意味がないなと。
ルダイ
実際にLiLo Coffee Roastersと喫茶をハシゴしたり、「餃子とリロと〇〇と」で食べた後にLiLo Coffee Roastersに帰ってきてくださるお客さんがとても多いですよね。
(2021年10月)餃子とリロと〇〇と プレオープン5日前。
ホッタさん
それに、自分の目の届く範囲の方が、街の空気感を作っていく手触り感を感じられる。
ルダイ
ひえ〜「街を作る」ですか…すごいスケールです。
ホッタさん
そこまで大仰な話ではないけど、可能性はあるよね。今まで積み上げてきたことを続けていってどんどん訪れてくれる人が増えて、「大阪に行ったらリロに寄ろう」ではなく「リロに行くために大阪に行こう」という流れを生むことができたらいいよね。そのためには店舗が1つより2つ。2つより3つの方が、実現の可能性が高くなる。
ルダイ
そうですね。
ホッタさん
自分達がこの街を変えられるんだとか、楽しさを創造できると思えた方が、自分達がやっている意味があると感じられて楽しいもんな。
ルダイ
堀田さんからは「コミュニティの大きさを意識する」という話を何度か聞いたことがあるのですが、いきなり全世界をなんとかしようとするのではなく、まずは自分達の手の届く範囲から、実感を持って地域の生活に楽しみやいい影響を与えられる組織でいようというのが堀田さんの考えなんですね。
同じスペシャルティコーヒーを扱うコーヒー屋でも、コーヒーの進化や発展を目的にするのか、コーヒーがある生活をゴールに設定するのかでアプローチが違うのかもしれません。どちらがいいという話ではないですが、リロが見ている景色は後者だなと改めて認識しました。