(聞き手:田川流大)
リロ珈琲喫茶には日夜、様々なお客様がいらっしゃいます。
その中には悩みを抱えた人もちらほら。
彼らの相談に親身に耳を傾け、力強い言葉と共に送り出すのは喫茶の店長、山本紘奈さん。
綺麗なピンクヘアがトレードマークのヒロナさんは、
面倒見のいい喫茶のおかん的な存在です。
対象を独特の感性で見つめ、一般的には「欠点」とされるあらゆる物事に惜しみない愛情を注ぐヒロナさんは、
リロ珈琲喫茶に懐の深い世界観を生み出す核となっています。
壁に直面するたびに厚みを増す表現と、ずっと変わらない根っこの感性。
「やりたいことだらけだからね」
感情のこもった言葉を紡ぐその姿からは、コーヒーへの愛と
喫茶をもっと面白くしたいというエネルギーが溢れ出ていました。
第6回
27歳とアドラー
ルダイ
「自分はこれが好き」というエネルギーはみんな同じだけ持っているわけではないと思います。ヒロナさんはそのエネルギー量が凄まじいですね。
ヒロナ
まじで(笑)
そうだなあ。でも今までそういう人じゃなかったの。むしろ逆で、周りに気を遣って何もできない人だったんだけど。そういう自分が嫌いで。自分の欲求を満たしてる人たちに憧れてたし、でもそうなれない自分もいた。
ルダイ
うんうん。
ヒロナ
その性格がガラッと、27歳の時に変わったんだよね。
ルダイ
明確!(笑)
ヒロナ
それはアドラーの心理学を読んでから。『嫌われる勇気』。
ルダイ
あぁ、はい。
ヒロナ
気を遣った挙句嫌われてたから、結局嫌われるんだったら自分のやりたいことをやろうと思って。やりたいことをやり出したら全部上手くいっちゃって。
ルダイ
へぇ〜!
ヒロナ
そう、仕事がすごく上手くいった。切ったんだろうねいろんなものを。
ルダイ
うんうん。
ヒロナ
自分の好きなものしか置かなくなったらすごい幸せになったから。そこからエネルギーがいっぱい出てきたんだろうね。
ルダイ
「手放す」ことの重要さはよく説かれていますが、実践するのは難しいです。それをやられたんですね。
ヒロナ
そのくらい追い込まれてた、私が。
ルダイ
あぁそうなんですか。
ヒロナ
周りに迷惑をかけ続けてたからね、仕事で。パートさん、学生さん、10人以上を抱えている中で私がリーダーっていうのがもうしんどくて。誰からも信用されないし、でも「店長」っていう名前がついてるのがしんどすぎて。
でもついてきてくれる人も数人いるんだよね。考えを変えなきゃと思っていたんだけど。
ルダイ
はい。
ヒロナ
会社の課題本があるんだよね、毎年これを読みなさいっていう本があるの。これを読んで感想文を書けば給料が上がるんだけど。
ルダイ
すごい、読書感想文で昇給(笑)
ヒロナ
それでアドラーの心理学を読んで。全部読まず、読みたい章だけ読んで書くんだけど、そしたら考え方が変わったっていう(笑)
ルダイ
おお、課題本で(笑)。しっかり影響受けてますね。
ヒロナ
そうなの。でも読みたい章しか読まないから。ほんとにね、全部読まないと危ない人になっちゃう。
ルダイ
あはは。
ヒロナ
そう、誰かを傷つける人になっちゃう。『嫌われる』の最後では「誰かのためになることが人間の欲求だ」というのがあるんだけど、そうなってないと本当に誰かを傷つける人になっちゃうの。
ルダイ
うんうん。
ヒロナ
そこをできてないよってセキネに言われたことがある(笑)
ルダイ
ええー!(笑)
ヒロナ
「あなたはアドラーかもしれないけど最後まで行ってないよ」って(笑)
アドラーを読んでメンタルは180°変わって、そこから次のステップとして「誰かを幸せにするために」と思うようになった。これも転機かなぁ。
ルダイ
それこそチューニングですね。自分の「好き」と人への貢献…
人のために何かすることも人間の欲求なんですね。
ヒロナ
そう、でも堀田さんを見ているとすごく思うよね。人のために生きてるもんね。
ルダイ
たしかに。「それがそのまま自分のためでもある」のようにおっしゃってますもんね。
ヒロナ
ね。
ルダイ
人を輝かせるのが…
ヒロナ
自分の趣味だし仕事だしっていう…。あーわかるって思う。最近だけどね、分かるようになったのは。
ルダイ
面白いわぁ…。あれ、インタビュー何時からやってますっけ(笑)
(最終回「リロ珈琲喫茶のこれから」へつづきます)