(聞き手:田川流大)
リロ珈琲喫茶には日夜、様々なお客様がいらっしゃいます。
その中には悩みを抱えた人もちらほら。
彼らの相談に親身に耳を傾け、力強い言葉と共に送り出すのは喫茶の店長、山本紘奈さん。
綺麗なピンクヘアがトレードマークのヒロナさんは、
面倒見のいい喫茶のおかん的な存在です。
対象を独特の感性で見つめ、一般的には「欠点」とされるあらゆる物事に惜しみない愛情を注ぐヒロナさんは、
リロ珈琲喫茶に懐の深い世界観を生み出す核となっています。
壁に直面するたびに厚みを増す表現と、ずっと変わらない根っこの感性。
「やりたいことだらけだからね」
感情のこもった言葉を紡ぐその姿からは、コーヒーへの愛と
喫茶をもっと面白くしたいというエネルギーが溢れ出ていました。
第3回
ずっとあまのじゃく
ルダイ
ヒロナさんは、特定の対象を「偏愛」しているような気がしていて…。「いろいろなものを満遍なく」ではなくて、「これのここの細部が〜〜いいんです〜〜」のような普通に見ているのとは違った角度からの熱量を持っている気がします。コーヒーに対しても人に対しても。
ヒロナ
うんうん。
ルダイ
コーヒーに関して言うと、ヒロナさんは最近「エイジング」の魅力についてよく語っていますよね。スペシャルティコーヒーの世界にいると、エイジングが良いなんて簡単には至らないと思うのですが、どうしてそのようなニッチなポイントを好きになるんでしょう。
ヒロナ
それは…分からない。
ルダイ
最初からその角度から見ているんですか?
ヒロナ
その角度から見る癖は昔からで、すごくあまのじゃくだった。
ルダイ
ふんふん。
ヒロナ
みんなが「これ好き」と言っているものを避ける気質がある。「特別でありたい」「みんなと違う動きをしたい」っていう考えが昔からあって。
まぁ面倒くさいんだけど、自分でも。
ルダイ
ははは。
ヒロナ
だからその癖がついちゃってると思う。
ルダイ
元々は、「人と違う視点を持ちたい」という。
ヒロナ
そう、そう思ってた。
ルダイ
かもしれないですが、今僕から見えるヒロナさんは、あんまり人を意識していないような気がするんですよ。
ヒロナ
うん。卒業しました(笑)
気質だからそう考えちゃう癖はあるけど、でも途中で自分が面倒くさくなっちゃって。
ルダイ
ええ(笑)
ヒロナ
自分で自分を包囲して…プライドだよね。誰も行かない道を行こうとしても絶対誰かがいるから、もう終わらないって分かってくるじゃん。
ルダイ
はい。
ヒロナ
それと周りの反応で「面倒くさい」って思われてるとわかってくるじゃん(笑)
それでやめようと思って、努力はした。
ルダイ
おお、努力で。
ヒロナ
うんうん。まず一般人になろうって。
ルダイ
おー、そっちに。
ヒロナ
本当に一般人になる努力はした。気付いたら変なところにいたから(笑)
ルダイ
気付いたのはリロに来るよりずっと前のことですか?
ヒロナ
うん。やっぱりイオンで働いてると、一般的な考えを持ってないと、ね。社員だから。
たくさんの部下に迷惑かけられないと思ったから、封印して一般人になる努力をして。
ルダイ
そうしたら無くなったと言うことですか?
ヒロナ
無くなりはしない、気質だから(笑)
もう、14年くらいかな、長い時間をかけて培われた偏愛は一回消したとて溢れ出ているわけよ、周りから見たら。
でも、偏愛する癖は一回封印したけど、面白い気質を持っていることを堀田さんは感じ取ってくれたかもしれないし、私もそれをリロだったら自由に解放できるかもしれないと思えた。
ルダイ
ふんふん。
ヒロナ
チューニングだよね。出すときと出さないときをちゃんとチューニングできるようになって、「やっと人になったな」っていう(笑)
ルダイ
たしかに(笑)
ヒロナ
そうそう、バランス。私の気質をビジネスにできるようになったというか、堀田さんがビジネスにしてくれる状態になったから、それは本当に嬉しかったなぁ。
ルダイ
それはシーズナルドリンクのことですか?
ヒロナ
いや、シーズナルの前に、私の裏メニューというのを作ってくれて。
ルダイ
あ、ゲシャですか。
ヒロナ
そう、ゲシャのスープ。
(第4回「ゲシャは「クラスの高嶺の花」」へつづきます)