(聞き手:田川流大)

 

リロ珈琲喫茶には日夜、様々なお客様がいらっしゃいます。

その中には悩みを抱えた人もちらほら。

彼らの相談に親身に耳を傾け、力強い言葉と共に送り出すのは喫茶の店長、山本紘奈さん。

 

綺麗なピンクヘアがトレードマークのヒロナさんは、

面倒見のいい喫茶のおかん的な存在です。

対象を独特の感性で見つめ、一般的には「欠点」とされるあらゆる物事に惜しみない愛情を注ぐヒロナさんは、

リロ珈琲喫茶に懐の深い世界観を生み出す核となっています。

壁に直面するたびに厚みを増す表現と、ずっと変わらない根っこの感性。

「やりたいことだらけだからね」

感情のこもった言葉を紡ぐその姿からは、コーヒーへの愛と

喫茶をもっと面白くしたいというエネルギーが溢れ出ていました。

 


 

(第1回)リロ入社は鏡越しに決まった

(第2回)喫茶奮闘記

(第3回)ずっとあまのじゃく

(第4回)ゲシャは「クラスの高嶺の花」

(第5回)「むっつりヒロナ」の根っこ

(第6回)27歳とアドラー

(最終回)リロ珈琲喫茶のこれから

 


 

 

 

 

第4回
ゲシャは「クラスの高嶺の花」

 

ヒロナ

ゲシャのスープを出した時に、私の「価値」ができたというのが、人生の転機かも。

 

ルダイ

おお〜。

 

ヒロナ

チューニングができるようになった一つの成果みたいな。

 

ルダイ

ふんふん。ヒロナさんの一見やっかまれそうな性質を表現に落とし込めたということですかね。

 

ヒロナ

ね。お金という価値に変えられただけではなくて、思想とか思考をアウトプットできるような状態にしてくれたのが、「こんなことできるんだ自分」という気づきになったな。

 

ルダイ

ゲシャはずっと好きなんですか?エチオピアのゲシャ?

 

ヒロナ

そう、前からずっとエチオピアが好きで。

 

ルダイ

はいはい。

 

ヒロナ

いろんなお店のコーヒーを飲んでいて「エチオピアが好きだな」と。その中でも「あ、美味しい」と思うときはゲシャであることが多かったかな。

 

ルダイ

なるほど。

 

ヒロナ

喫茶をオープンした時も最初のゲシャがすごい美味しくて「なんじゃこりゃ〜」って。

そこからずっとゲシャゲシャって言ってる(笑)

 

ルダイ

スペシャルティコーヒーは抽出でいじらずにシングルオリジンの味わいを楽しむのがベストだ、というのが主流の考えだと思うのですが、その中であえてスープを作り出したのはどうしてなんでしょう。たしか、「ゲシャのスープ」にはアイスが入ってましたよね。

 

ヒロナ

うん。

 

ルダイ

それとバジルと。

 

ヒロナ

うん。

 

ルダイ

めちゃめちゃ手が加わってる(笑) これはどうやって生まれたんですか?

 

ヒロナ

先に思想が出てきたなぁ。

 

ルダイ

ほうほう。

 

 

(『ゲシャのスープ』詳細はヒロナまで)

 

ヒロナ

もう当時は「ゲシャ」って言われ尽くしてたのね。「そりゃあその値段出せば美味しいコーヒー飲めるっしょ」みたいな感じの雰囲気は出てたの。

 

ルダイ

うんうん。

 

ヒロナ

私は「にしても美味しいんだけどなぁこのゲシャ」と思ってて(笑)

 

ルダイ

すごい愛(笑)

 

ヒロナ

「美味しい/美味しくない」って、頂点を目指すと他を否定しにかかってる気がして。

 

ルダイ

うんうん。

 

ヒロナ

自分もそういう癖あるけど、そういう自分はすごく嫌いだったりするし、疲れる。

だから「この子が頂点」じゃなくて「この子のかわいい部分を知ってほしい」「個として見てほしい」みたいに思うようになった。

 

ルダイ

おお〜。

 

ヒロナ

「誰かが一番」じゃなくて、全部均して「個」として見たら一番にならない。

それが私が疲れない生き方なのかなぁって。

 

ルダイ

なるほど。思想入ってますねぇ(笑)

 

ヒロナ

あはは。疲れない生き方っていうのは最近よく思うことだけどその時はあんまり思ってなかった。で、そのゲシャを飲んだ時に「クラスの高嶺の花」に見えたの。

 

ルダイ

ほぉ。

 

ヒロナ

誰もあんまり相手にしないけど優等生で美人さんで、でも距離感はすごく遠い。そういう憧れの存在とゲシャがすごくリンクして。ちょっとそれはセキネにもリンクしてたんだよね。

 

ルダイ

おぉ〜。

 

ヒロナ

お客様はセキネに会いに来てるんだけど話しかけづらい。見るだけで満足してるみたいなところですごくセキネとゲシャがリンクしていて。

 

ルダイ

ほんほん。

 

ヒロナ

私はずっとセキネの隣にいたから、「もったいな!」と思って(笑)

こんなに噛めば味出てくるのに〜って。

 

ルダイ

あはは。

 

ヒロナ

それで、そのかわいい部分ってネガティブな部分なんだよね。人間として完璧じゃないところがすごくかわいい部分だったから…。セキネは後ろ向けば尻尾が生えてるし(笑)

 

ルダイ

たぬきですからね(笑)

 

ヒロナ

そうそうそう。カウンターの後ろに入れば耳が生えてるし(笑)

 

ルダイ

たぬきですから。

 

ヒロナ

お客さんから見えなくなった途端ぐーたらするわけですよ(笑)そのかわいい部分を知ってるから。

ゲシャも毎日毎日カッピングしてれば分かるよね。「あ、フレーバー落ちてきたな」とか「今日めっちゃ酸味出てるな」とか。そういうのを感じてたら、「あれ、高嶺の花も気分あるやん!」ていう。

 

ルダイ

へえー!

 

ヒロナ

完璧人間じゃないって分かった時に、「これ誰かに伝えたい」と思って。

 

ルダイ

すごい。ええとそれを、

 

ヒロナ

ドリンクにした(笑)

 

ルダイ

へえぇ!(笑)もはやコーヒーというより人として見てますね。

 

ヒロナ

そう、人として見てほしい。人として見た時に、コーヒーも単体として見てくれるはずやと思って。

 

ルダイ

はぁ〜。その頃からコーヒーを人に…。例えようというかもう、感じちゃうんですね。

 

ヒロナ

思っちゃう。思っちゃった(笑)

だからさっき流大くんが言った、ピンポイントに集中して「いい!」と思うその感覚は自分ではもうピンときちゃうから、なんでそこに惹かれたかは分からない。

 

ルダイ

ふんふん。コーヒー以外ではあるんですか、そういう偏愛は。

 

ヒロナ

いっぱいある。

 

 

 

第5回「「むっつりヒロナ」の根っこ」へつづきます)

 

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