(聞き手:田川流大)
リロコーヒーのマネージャー、セキネさん。
「元舞妓のバリスタ」「着物を着てコーヒーを淹れる人」といったイメージが先行しがちですが、昨年からは 現場から少し距離を置いた働き方に。
セキネさんは不思議と、未知なる境遇に身を投じることを恐れず
大きな決断は直感に従うと言います。
非言語的で感覚的な核の部分と、ミクロな視点でどこまでも潜る 深淵な思考力。
この対照的な2つの顔が共存しているからこそ、
リロの調整役でありながら表現者であるという
本当に「セキネユカしてます」としか言いようがない仕事をしているのでしょう。
人との関係に焦らず、深い信頼関係を丁寧に築きながら
「セキネユカ」の表現は刻とともに層を重ねていきます。
第5回
セキネのお茶会
ルダイ
次はお茶会についてお聞きしたいです。
セキネ
おー、お茶会ね。
ルダイ
僕は去年の9月、セキネさん主催のお茶会に参加しました。リロを受ける数ヶ月前のことでしたね。「こたつ部屋」のラジオを聴いてセキネさんが深い思考と独特の感性をお持ちの方だとわかっていたので、楽しみにして行きました。
会場のリロ珈琲喫茶に集まるゲストは、1開催日につき3人のみ。じっくり時間をかけて、数種類のお菓子が振る舞われました。これらはただのお菓子ではありません。セキネさんが「当たり前を疑う」と言う大きなテーマのもとに思考した結果がお菓子に落とし込まれ、言葉での説明とともに表現されていました。脳みそと五感をフルに使う刺激的で静かな時間は、今でもはっきりと記憶に残っています。
そして今回、リロ珈琲喫茶3周年のタイミングで再びお茶会を開催される運びになりました。この「セキネのお茶会」について、始まった経緯などから教えていただきたいです。
セキネ
はい。お茶会は、マネージャーという仕事を始めた私が「プレーヤー」になる仕事やと思っていて。
ルダイ
はい。
セキネ
リロのマネージャーとしての私とお茶会の私は、頭の構造も出てくる言葉も全然違っていて、感覚としては副業のような感じかな(笑)
ルダイ
なるほど(笑)
セキネ
「いつもと違う場で何かをする」のが好きなのよね。
ルダイ
「いつもと違う場で何かをする」。
セキネ
そう。前の仕事もそうだったんだけど、毎日同じ場所にずーっといる、というのが私は楽しくなくて。
ルダイ
うんうん。
セキネ
もっと楽しさを求めると「いつもと違う場所」になるんだけど、ここが重要で「いつも違う場所」じゃなくて「いつもと違う場所」が好きなのよ。
ルダイ
ええと?(笑)
セキネ
「いつも」がないとダメなの。
ルダイ
あーなるほど!
セキネ
そう。「いつも」があった上で、「いつもと違う場で何かをする」ことのワクワク感が私は好きで。それを求めるようになって、イベントをやり始めたのよね。
ルダイ
なるほど〜。
セキネ
でも、「コーヒーを淹れる」をしたいのか、と言われるとそうでもないのよ。「何か」をしたいの。「いつもと違う場で何か」をしたい(笑)
ルダイ
全然具体化されない(笑)
セキネ
だから、コーヒーという枠はあんまり考えなくていいんじゃないかなと思ってた。
それで静岡のETHICUSさんが前から一緒に何かやろうよと言ってくれてて、それが具体化したのが一つのきっかけだった。
ルダイ
ほんほん。
セキネ
私は締め切りがないと何も完成できない人だから(笑)
ETHICUSさんに誘ってもらえて本当に良かったと思う。自分で一発目を「やります」と言っていたとしてもあれはできなかったと思うから、他の人との関係性の中で出来上がったという大事な会だったな。作る過程から終わった後まで気づきばかりなのよね、お茶会は。
ルダイ
そうなんですね。
セキネ
お茶会は始まりと終わりが開催日とイコールじゃないなというのは感じていて。やると決めて思考を始めた日が始まりで、終わって段々と日常に戻っていくまでがお茶会で、その間はプレーヤーの感覚なんだと思う。
ルダイ
コーヒーという枠じゃなくてもいい、というお話がありましたが、コーヒーは一つのツールとして捉えるということですね。
セキネ
うん、そうだね。
ルダイ
ではお茶会では何を表現しようとされているのですか?
セキネ
あ、テーマは「私の思考」ですね。(笑)
ルダイ
セキネさんは考えることが好きですもんね(笑)
セキネ
考えること好きです!
(最終回「セキネユカは表現者。」へつづきます)