(聞き手:田川流大)

リロ珈琲喫茶には、心地よい空気を作り出すスペシャリストがいます。

佐野亮介さんは常に周囲に気を配り、お客様を全力で楽しませつつも

ひとつひとつの動作に宿る自然な美しさが乱れることはありません。

 

自分に与えられた役割を静かに突き詰めるその背中には、

価値観の軸となる「踊り」から得た美意識が見え隠れ。

 

自身の中に確固たる価値観を育みながら 決して自慢せず

今日も謙虚なプロフェッショナルであり続けます。

 


 

(第1回)恥と経験

(第2回)リロの接客

(第3回)いちばんは、お客様

(第4回)イギリスの記憶とスコーン

(第5回)正解はない、間違いもない。

(最終回)引き算の美意識

 


 

 

 

 

第4回
イギリスの記憶とスコーン

 

ルダイ

7/7でリロ珈琲喫茶は3周年、来月にはLiLo Coffee Roastersが7周年を迎えます。

今年は、初の試みとしてリロスタッフの一人一人が自ら企画を考え、お客様に喜んでいただく為にそれぞれの表現を作り上げています。

 

サノ

はい。

 

ルダイ

サノさんは、スコーンを作って提供するんですよね。スコーンには以前から思い入れが強かったんですか?

 

サノ

えっとですね、静岡にいた時に、カフェで「あー、今のんびりしてるなぁ」と実感することがよくあって。パンタリタという地元のカフェなんだけど、そこでスコーンを食べながらゆっくりお茶をしていた記憶があったんです。

 

ルダイ

はい、はい。

 

サノ

それから時代は過ぎて、27歳でイギリスに行った時に、イギリス文化かっこいいぞと。

 

ルダイ

あぁ!サノさんはイギリスでも、カフェでゆっくりする時間や空間に惹かれていましたね!そしてイギリスといえばアフタヌーンティー、つまりスコーンですね。

 

サノ

はい、そこでつながる。

 

ルダイ

そうですよね、イギリスでのスコーンの立ち位置って、日本とは全然違って、生活に根付いている感じがありますよね。

 

サノ

あ、でも僕はイギリスにいた時期も踊りに夢中で、あまりスコーンの事は見ていなかったんです。

 

ルダイ

そうなんですか!

 

サノ

「せっかくイギリスに来たから」と記念で出たバトルイベントで運良く優勝しちゃったり。

 

ルダイ

えぇー!

 

(サノさんが優勝したイベントでの予選ムーブ映像) 

 

サノ

運良くよ、本当に(笑)

 

ルダイ

運良くは優勝できないです(笑)

 

サノ

ラッキー(笑)。そこでバカだから「俺やっぱりダンス好きだわ!」って。

なので正直、いろんなお店を見てかっこいいなとは思っていたけれど、イギリスではあまり食べ物にはフォーカスしていなかった。雰囲気とかインテリア、提供している器の方に目がいっていました。

 

ルダイ

ふんふん。

 

サノ

だからイギリスでのスコーンは1ミリも覚えてない。

 

ルダイ

そうなんですね。過去のエピソードがきれいに繋がった!と思ったんですが、そうでもないんでしょうか(笑)

 

サノ

いや、だけどイギリスのカルチャーについてはお姉ちゃんから「私たちはちゃんと仕事中に休憩時間を取ってゆっくりお茶を楽しむんだよ」みたいに話を聞いていて、「イギリスの文化はいいなぁ素敵だなぁ」というイメージがあった。

 

ルダイ

その印象が残ってるんですね。

 

サノ

そうそう。やっぱりイギリスかっこよかったなぁと思いながら過ごしてた。そして、いつかお店やりたいと思っていた時に、「スコーンって簡単なんだ、やってみよう」というところから作り始めました。

 

ルダイ

へぇ〜なるほど。

 

 

サノ

で、思い返すと地元のカフェでよくスコーン食べてたな、という記憶から自分の中でつながってきて、美味しいスコーンやりたいなと思い、動き出したという流れですかね。

 

ルダイ

最近は熱心にスコーンを作られてますよね。研究するのは楽しいですか?

 

サノ

楽しいですね、チューニングしていく感覚がコーヒーのドリップと一緒だと思って。

 

ルダイ

ほう!

 

サノ

コーヒーでいう「挽き目」「湯温」などと同じように、ここを変えたらこうなる、というチューニングの項目を並べてイメージを膨らませながら試しているので、すごく面白いです。

 

ルダイ

ほう〜。理想の味はあるんですか?

 

サノ

一応あるにはあるんですが…。店によって全然違うんですよね〜。そして、どうやら全部正解なんですよね。

 

ルダイ

おお!

 

サノ

そして、その「全部正解」という考えはそのまま、僕がダンスで求めていたものだったりするんですよ。

 

 

第5回「正解はない、間違いもない」へつづきます)

 

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