(聞き手:田川流大)

リロ珈琲喫茶には、心地よい空気を作り出すスペシャリストがいます。

佐野亮介さんは常に周囲に気を配り、お客様を全力で楽しませつつも

ひとつひとつの動作に宿る自然な美しさが乱れることはありません。

 

自分に与えられた役割を静かに突き詰めるその背中には、

価値観の軸となる「踊り」から得た美意識が見え隠れ。

 

自身の中に確固たる価値観を育みながら 決して自慢せず

今日も謙虚なプロフェッショナルであり続けます。

 


 

(第1回)恥と経験

(第2回)リロの接客

(第3回)いちばんは、お客様

(第4回)イギリスの記憶とスコーン

(第5回)正解はない、間違いもない。

(最終回)引き算の美意識

 


 


 

 

 

第2回
リロの接客

 

ルダイ

リロコーヒーの事は以前から知っていたんですか?

 

サノ

知っていました!4年前くらいに大阪に踊りのイベントで来ていて、ついでにコーヒー屋さんを巡っていた中で、初めて来店したっていう感じですかね。

 

ルダイ

4年前だったらまだ喫茶はオープンしていない頃ですね。

 

サノ

そうだね。その時はケイタさんがいらっしゃって、僕はガラス際の席に一人座りました。「椅子高いな」とか思ってドキドキしながら。

 

ルダイ

(笑)。

 

サノ

「入るの怖いな〜」と思いながら、一旦店の前を通り過ぎて隣のVillage Vangardに入ってみたりね。

 

ルダイ

あ〜あ〜(笑)

 

サノ

勇気出して入ったらケイタさんが明るく迎えてくださって。ケイタさんは来る人来る人みんなと漫才みたいな掛け合いをしていて、僕はコーヒーを飲みながらクスクス笑っている感じ。

そのままコーヒーを3杯飲んでお豆を買って帰りました。

 

ルダイ

それから時が経って、リロに応募したときは他にもいくつかお店を探していたんですか?それとも最初からリロに来たいと思っていたんでしょうか。

 

サノ

その時期は前職を辞めていて、焦っていたから、やっぱり最初は働かせてくれるならどんなコーヒー屋さんでもいいと思ってた。必死だったからね。

 

ルダイ

はい、はい。

 

サノ

だけど、ちゃんと自分が納得行くところで選ばないとまずいぞと思い直しました。そこで「そういえばリロコーヒーいいお店だったなあ」と。

それでもう一回行ってみたら、マイコさんとナミさんがすごく丁寧に接客してくれて。

 

ルダイ

はい。

 

サノ

帰り際にマイコさんが外まで出てきてくれて、「ありがとうございます、また来てくださいね」って。すごく素敵だなと思って、そこで初めて自分の中で腑に落ちたというか。自分がしたい接客ができるお店で働いた方がいいな、と。

 

ルダイ

うんうん。

 

 

サノ

それまでの飲食業の経験で、お客様にサービス提供して喜んで頂く事の楽しさ、お金を頂く事のありがたさは思い知っていたから、だからこそちゃんとありがとうって言える職場がいいなと思って。そこでダメ元で受けてみようと思ったのがリロだった。

 

ルダイ

サノさんのバリスタ像は、僕にとってはすごく新鮮なんです。僕がコーヒー業界で働きたいと思っていた時に抱いていた「バリスタ」のイメージとは少し異なっていて。

 

サノ

ええ!

 

ルダイ

カップクオリティを追求するのは当然の仕事なんですが、サノさんはコーヒー以外の部分でお客様を楽しませる、満足してもらうことに強く意識が向いている気がしているんです。

 

サノ

ほお、なるほど。ある意味では、自分の中に芯というか、我を持たないようにしています。それは、表現したい自分より、お客様の求める自分を体現できるようにする為ですね。ケイタさんを見て、さらにそういう思いが強くなりました。

 

ルダイ

自分を押し殺しているようでしんどくなることはないですか、?

 

サノ

ないですね、それがプロでしょ、と思うかなぁ。

 

 

第3回「いちばんは、お客様」へつづきます)