第4回
作って、伝えて。人に喜んでもらいたい。
ルダイ
「自分のお店を持ちたい」という目標は高校生の頃から言い続けているんでしたっけ?
キョウスケ
そうやね。将来、何か自分の店を持ちたい。
ルダイ
キョウスケさんは高校を卒業した後、製菓学校に通われますよね。当時は、将来ケーキ屋を開きたい、と考えていたんでしょうか。
キョウスケ
多分飲食だろうなと思ってた。
ルダイ
そもそもパティシエを志したきっかけは何だったんですか?
キョウスケ
お菓子を作って喜んでもらえた経験の積み重ねかなぁ。
ルダイ
ほうほう。
キョウスケ
高校生の時に、シュークリームを作って学校に持っていったらみんながすごく喜んでくれて。一年間くらいシュークリームを作り続けてた時期があったんよね。
ルダイ
シュークリームですか!すごいですね。
キョウスケ
作ること自体も楽しいけど、何より「美味しい」と言ってくれるのがすごい嬉しかった。「作ること」ならみんな喜んでくれる。これは、嬉しい。その込み上げてきた気持ちが今もずっと続いてる。
それと。年齢の離れた兄には何をやっても敵わなかったんだけど、お菓子を作ることは唯一「僕にしかできない」と思えた、ということも大きいかな。
ルダイ
作ること、それもお菓子を作ることがキョウスケさんの「得意」だと気づいた経験だったんですね。
美味しいものを作って喜ばれるという嬉しさは、先ほどのお話にあった「教え方が上手い、伝え方が上手い」ことで褒められた時とは違う感覚なんですか?
キョウスケ
別の感覚かな。僕が教えて嬉しい時は、教えた人が何か出来た時やから。
ルダイ
おお〜なるほど。「教え方がうまいね」ではそこまで嬉しくないんですね。
キョウスケ
教えたことでその子が何かを達成して喜ぶのが嬉しい。僕の「嬉しい」は相手基準かな。
ルダイ
あぁ!そこは「作ること」の喜びと共通していますね。
キョウスケ
そう。相手が喜ぶのが好き。
ルダイ
お菓子作りでも「キョウスケさんの腕すごいね」ではなくて、相手が喜んでいるから嬉しいということですね。そういうことか〜。
キョウスケ
だからこそ、僕自身は食べたものが美味しくて幸せになることはあんまりない。
ルダイ
食べるより作る方が好きとおっしゃっていましたもんね。
キョウスケ
だから、作ったものが美味しくなかったり、伝えたことがうまくいかなかったりするのが不安なんよね。
ルダイ
相手の反応が気になるんですね。喜んでもらえた時の嬉しさが大きい分、その裏側には不安が付き纏うんでしょうね。
キョウスケさんにとって大事なテーマは「作ること」かと思っていたのですが、もっと広い捉え方をしたほうがしっくり来そうです。「伝える」ことも含めて、「自分が何かを人に与えて、それが相手に良い影響を及ぼす」。
これはキョウスケさんの大切な価値観かもしれないですね。
キョウスケ
あぁ、そうなんかな。
ルダイ
今キョウスケさんが持っている武器、というか能力が、コーヒーやお菓子を作ることと、喋りで人に伝えることで。
そのどちらもが、伝えた相手、食べてもらった相手の反応でキョウスケさんが喜びを得られる。
キョウスケ
奪う人より与える人がいいなぁ、僕もそっちやと思う。
ルダイ
例えばキョウスケさんが料理を作ってもらって「うまい!」となるよりも、自分が作って提供する側の人間でいた方が、キョウスケさんにとっても喜びが大きいということですね。
キョウスケ
そう。逆に、何かしてもらうのは苦手で、誕生日プレゼントをもらった時は嬉しいけど困る。自分が人をお祝いするのは好きやねんけど、お祝いされたらどうしたらいいかわからへん。
(第5回「これまでの集大成、これからの第一歩」 へつづきます)