(聞き手:田川流大)
一年間のLCR勤務を経て、リロ珈琲喫茶という新天地で歩み始めたタクミくん。
試行錯誤を楽しむその性質によって築かれた膨大な知識と抽出技術は、
そのまま引き出しの多さとなり 常にお客様の期待以上のパフォーマンスを発揮します。
その凄まじい進化の速さは、タクミくんのずば抜けた行動力をしてこそ成し得ることです。
今後 喫茶のヒロナさんやサノさんに多くを学ぶことで今まで以上に人間的な幅を広げ、
唯一無二の魅力をぐんぐん伸ばしていくことでしょう。
第1回
ニュージーランドにて 。
ルダイ
タクミくんは去年の4月にリロに入社してからこの一年間はLiLo Coffee Roasters(以下LCR)に勤務していて、リロ珈琲喫茶勤務に変わったのはつい最近の話なんですよね。
タクミ
うん。
ルダイ
喫茶に来て、お客様とのコミュニケーションの形も変わったりしましたか?
タクミ
そうだね、喫茶では僕はカウンターの中で抽出していることが多いから、お客様とお話しする機会は減ったかな。
ルダイ
そうなんですね。LCRの時は結構深い話をすることもあったんですか?
タクミ
うん、LCRの時は多かったね。特にコーヒーの仕事を目指している人たちの相談に乗って、長く話すことは多かった。
ルダイ
なるほど。
タクミ
「コーヒーしたいんですが、どうしたらいいですか?」っていう質問が多かったと思う。思いを聞きながら、僕の経験が少しでも参考になればと思って相談に乗ってた。
ルダイ
実際に僕もコーヒー屋さんで働きたいとずっと思っていましたが、どうやってスペシャルティコーヒー店で働けるか分からなかったですもん(笑)
タクミ
うんうん。
ルダイ
レベルの高いお店ほど経験者しか働けないと思っていましたし、実際そうである場合が多いと思います。じゃあどうやって経験者になったらいいのか、という(笑)。 スターバックスくらいしか選択肢が浮かばなかったですね。
タクミ
うんうん、合ってると思う。僕はそうやってきたからね。
ルダイ
あれ、タクミくんは元々スタバで働いてたんですっけ?
タクミ
いや、スタバではない。僕はニュージーランド(以下NZ)でワーキングホリデーをしていたんだけど、NZのカフェは即戦力になるバリスタ経験者しか雇ってくれなかったんだよね。コーヒー専門店だけじゃなくて、どんなカフェでも未経験者は受け入れてもらえなかった。
ルダイ
じゃあ、NZでコーヒーの仕事に就くための一歩目はどうしたんですか?
タクミ
僕は日本で調理師だった経験があるから、NZでも最初は日本食レストランでキッチンの仕事をしてた。英語が喋れるようになってきてからはホールにも入って、次のステップと思ってコーヒーを始めようとしたんだけど、全くダメだったんだよね。
ルダイ
ほうほう。
タクミ
履歴書も60件配ったんだけど、1件も返ってこなかった。経験がないから。
ルダイ
すごい…。厳しいですね。
タクミ
それでも、なんとか英語が話せる仕事がしたかったから職を探し続けて、ウェリントンの大きな飲食店グループに雇ってもらえた。そこでは新店の立ち上げメンバーになってメニュー開発なんかをしてたんだよね。
ルダイ
なるほど。
タクミ
メニュー開発が安定してきたときに、空いた時間に「コーヒーマシン触らせてよ」って少しずつコーヒーを淹れ始めて。
ルダイ
貪欲!
タクミ
キッチンの人のためにコーヒーを淹れたりね。
そのうちエスプレッソが落とせるようになった。コーヒーにこだわらない仲間も多かったんだけど、僕は均一に抽出したかったから、スケールを持っていって抽出してた。
そうすると、コーヒーにこだわらなくていいダイニングバーでコーヒーにこだわってる人が働いてる、みたいな構図になって。
ルダイ
おお〜なるほど。
タクミ
しばらくして会社のマネージャーが「夜の部のコーヒー担当に、あのコーヒー好きのあいつどうだ」って推薦してくれて、コーヒーメインで働けるようになった。コーヒーだけじゃなくてワインの知識やバーの技術を覚えながらね。
ルダイ
ほうほう、すごい!キッチンからきれいにコーヒーまで繋がりましたね。
タクミ
コーヒーの仕事を大体覚えて、スペシャルティコーヒーに携わりたい気持ちが強くなってきたことをマネージャーに相談して、その飲食グループは辞めることにした。
それから履歴書を配り歩き、”FRANK’s”っていうお店に入れてもらった、という流れかな。FRANK’sはNZのチャンピオンシップで3位になったことのある人が経営しているコーヒー屋で、すごいお店に拾ってもらったと思ったね。
ルダイ
おぉ、FRANK’sからスペシャルティコーヒーの世界にどっぷりハマっていくんですね。
ただ、そもそもタクミくんがNZに行ったのは、コーヒーのためではなかったですよね?たしか。
タクミ
全然関係ない、むしろコーヒーは嫌いだった(笑)
(第2回「話したい。伝えたい。」へつづきます)