第3回
グラデーション / カシカ
ルダイ
セキネさんは本もこの一年でとても読むようになりましたよね。元々あまり…
セキネ
全く読まない、読めない人やったなあ。最近は結構読んでるね。小説では、人の心を学んでます(笑)
ルダイ
何かきっかけがあったのですか?
セキネ
私は、自分にとって問題がなくても世間一般的に悪いとされる特徴はいっぱい持ってると思っていて。あ、ここが私の弱点なんやとわかると、ダメなりにちょっとでもましにしたくなる。
ルダイ
ほうほう。
セキネ
極端が苦手だからね。いろんな物事は、0か100じゃなくてグラデーションやと思っていて、私はこの両極の間をどれくらい行き来できるかというのが楽しみなんよね。
と言いつつかなり極端な人間やけど(笑)
ルダイ
なるほど(笑)
セキネ
小説は、こういう時に人はどう考えるのかが言葉で書いてあるから、スッと入ってくる。
ルダイ
確かに、俳優の表情から心情を読み取るよりもずっと簡単ですね。セキネさんはこれから私生活でも仕事でも、リロの外にどんどん出ていくと思います。直接体験でも本を通した間接体験でも、ひとに触れる機会が一気に増えますね!
読む本はどんな選び方をしているんですか?
セキネ
本も、読めるものと読めないものがあることがわかったの。
結局私の基準は”ひと”だなとわかった。本を買うとき私自身にどんなエピソードがあったのかを大事にしていて、こういうことがあった本だな、と感じるだけで、その本への思い入れが生まれて読めるんよね。これは井尻さんのお店(井尻珈琲焙煎所)で買ったなぁ、蕪木さんでこの本を買った時はあんなことがあったなぁ、とかね。
ルダイ
本の内容じゃないんですね(笑)
セキネ
そう(笑)中身じゃない。
ルダイ
内容をみて読む本を決めていたら偏りが出そうですが、人に選んでもらった本だと、いろんな種類の刺激を得るチャンスがあって良いですね。
セキネ
そうだね、広がりがある。
まだ本の内容自体に好みを持つほど読書レベルが高くないからでもあるけど(笑)
セキネ
いま、次の「セキネの茶会」のテーマについて考えていて。
お茶会は「当たり前を疑う」を軸に、その時私が反応していることを言語化して、お菓子として表現していたのね。初回は「液体と固体」、去年は「温度」にフォーカスしたり。
ルダイ
はい。
セキネ
私はすごく楽しいの。やけど、めちゃめちゃわかりにくいよな、とふと思って(笑)
もっとたくさんの人と共有したいというか、今のお茶会が極端なことに気づいた。
ルダイ
ほうほう。極端、セキネさんが苦手なことですね。
セキネ
8月に静岡のEthicusさんでお茶会をやるんやけど、リロの外でお茶会をするとなると一層、私がどんな人か、何を考えてるか知らない人がたくさんいる。
お茶会を楽しめていない人もたくさんいるかもしれなくて、もっとみんなが楽しめるものが良いなと。それで「カシカ」を思いついた。
ルダイ
カシカ?
セキネ
二重の意味があって、「可視化」と「菓子化」。
Ethicusのお二人、よしやさんとあゆみさんを私の視点からカシカしようと思って。
お客さんもEthicusのお二人自身も、それぞれよしやさんとあゆみさんを知ってる。みんなの中にも私の中にも共通してあるものを表現することで、その場だけの表現になるんじゃないかなと思って。
ルダイ
ほお〜!面白いですね。
セキネ
私はカメレオンやから、この人のこういう部分はこうだな、を表現するのが得意。
これなら自分の特性をいい方向に使って、いいバランスでできそうな気がする。
ルダイ
多くの人が楽しめるテーマでありながら、セキネさんの目と頭をいかした表現ですね。
セキネ
私は人が好きで、人の温度を感じられるし、私にしかできないことな気もする。
それを表現できて共有できると私も楽しいし、そこで生まれる何かをみんなで味わえたらいいな。
うん。「当たり前を疑う」軸はそのまま、カシカという表現方法にチャレンジしたい。
ルダイ
ひえ〜、すでに楽しみです。今のお話を聞いていて、「写真」みたいだなと思いました。
セキネ
ほーん。
ルダイ
LiLo in veveの美容師、イクさんが思い浮かんだんです。イクさんはフィルムカメラで家族写真やマタニティフォトなどを撮る活動をされていて、ルポライターの記事に使用しているスタッフ写真はイクさんが撮影してくださいました。フィルムカメラのファインダーを通すことで、イクさんと被写体の関係性や、撮影時の空気が閉じ込められています。
カシカも、セキネさんにEthicusのお二人がどう見えているか、をお菓子に投影していて、0から1を生み出す創作ではなく「フィルター」を使った表現である点が似ているなと。
セキネ
なるほどねぇ。
ルダイ
去年のインタビューで、セキネさんはお茶会が好きな理由として「いつもと違う場所で何かするのが好きだ」「日常があるからこそ、非日常が楽しい」とおっしゃっていました。
セキネ
うんうん。
ルダイ
お茶会という非日常の体験を楽しむためには、「いつも」の文脈を共有できていることがとても大事なのですね。その点カシカは、カシカされる人を知っている人全員が「いつも」を共有できていることになります。「いつも」をセキネさん自身ではなく表現する対象にしたんですね…さすがの発想で震えています。
セキネ
うんうん、そうすれば日常を共有できるもんね、でもカシカすることで日常なのに非日常みたいな。今は自然と繋がっていく人たちも多いから、これから色々できそうやなと思う。
ルダイ
リロのマネージャーとしても、私生活でも意識が内側ではなく外に向いている今の状態だからこそ、このようなワクワクするアイデアが生まれたんだと思います。これからマネージャーのセキネユカ、アーティストのセキネユカがそれぞれどんな歩みを進めるのかワクワクしますね。ありがとうございました!
(インタビューは以上です。ここまでお読みくださった皆さま、ありがとうございました!)