第2回
意識の変化 / 技術
ルダイ
喫茶で働く中で、他にタクミくんが変わったことはありますか?
タクミ
そうやね、今までよりも「どう魅せるか」「どう見えているか」を意識するようになった。最近も美しいシェイカーの振り方を佐野さんに教わったり。
ルダイ
ほうほう。タクミくんといえば、理論的に抽出の調整をして最高の味わいを作りだすことを大切にしている印象でした。
タクミ
たしかに今までは「ものが良ければ伝わるはず。味が美味しければわかってもらえるはず。」という主義だった気がする。でも、いくら品質が高くても、興味を持たれなかったり、価値を感じてもらえないことも沢山あるんだと感じて、勉強してる。
「美味しい一杯の追求」は、もちろんめっちゃ楽しいし、新しいテクニックを試して習得するのも楽しい。だけど、味を追求することはもう当然のことになっているかな。それをちゃんと伝わるようにしなくてはいけないと思ってる。
ルダイ
確かにその通りですね。美味しいだけのコーヒーは、アンテナを張ってくれている人にしか伝わらないですもんね。
タクミ
6月から提供してる「夜のクリームソーダ」も、最初僕はテーマなしでレシピを開発したんよ。「これをこうしたら美味しくなりそう」って。
ルダイ
はい。
タクミ
試作品を喫茶のみんなに飲んでもらったときに、ヒロナさんが「これナイトプールみたいだよね」ってどんどん発想が膨らんでいって。やっぱりイメージやストーリーがあるとお客さまにもより喜んでいただけるんよね。
ルダイ
なるほど。
タクミ
あ、これは僕の頭では思いつかない領域だと思って、頼るようにした。
ルダイ
去年のインタビューでは、「最近やっと人に頼れるようになった」と言っていましたね。
タクミ
もう今ではたっくさん頼ってるよ(笑)
ルダイ
みなさんそれぞれにスペシャルで、頼り甲斐があって心強いですよね。
タクミ
ね。コーヒーの好きなところもみんな違ってる。
前、喫茶のメンバーで「なんでコーヒーが好きになったか」という話になったんだけど、ヒロナさんは「コーヒーにまつわる人とカルチャー」が好きで、佐野さんは「コーヒーはかっこいい」。キョウスケ君はコーヒーを作ることが好き。僕はコーヒーのプロが使っている技、技術が好き。
ルダイ
見事に違ってますね(笑) 「技術」ってどういうことでしょう?
タクミ
ラテアート、調整の技術、焙煎の技術…。構造を見るのが好きなんよね。
親が建築関係の仕事をしている影響か、昔から工作が好きだった。一人でパソコン組み立てたり、毎週自転車を解体して丸洗いしたり。
ルダイ
ひゃー、考えられないです、あんな複雑なものを…。
タクミ
そこがいい。僕がやってることは結構面倒くさいことが多いかも。
のんびりしてるのもあって工程を踏むことが嫌じゃなくて。複雑なことが好きで、小細工を多くいれてしまいがち。
ルダイ
その実験好きと根気強さは、今後「見せ方」「伝え方」を伸ばしていく上でとても役に立ちそうですね。
(第3回「家族 / 化学反応」へつづきます)