第2回
新天地 / 新境地
ルダイ
去年のインタビューでサノさんは、喫茶の3周年イベントで提供するスコーンセットは「服装やダンス以外で初めての自己表現なので。恐怖です(笑)」とおっしゃっていました。
サノ
うんうん。
ルダイ
喫茶でネルドリップを始めて、今年の5月からは毎週月曜、堀江のheys coffeeでスコーンを販売されています。(僕はこのスコーンの大ファンです)
この一年で自己表現の機会が増えてきたと思うのですが、自己表現をすることに対する慣れや心境の変化はありましたか?
サノ
そうですね、以前よりも慣れてきた感覚はあります。自信満々になった、というわけではないのですが、自分が表現したことで喜んでもらえる喜びが怖さを上回っているので、今続けられています。
ルダイ
なるほど。
サノ
もちろんまだまだ不安もありますが、後押ししてくれる仲間もいますから。
ルダイ
サノさんはこの夏でリロを離れ、パートナーのアヤカさんとともに、スコーンと紅茶、コーヒーのお店「-CLEHA- COFFEE & TEA ROOM」の開業に向けて本格的に動き始められます。
今までで最も大きな自己表現になりますね。今のお気持ちはいかがですか?
サノ
京都にお店を構える予定なのですが、それぞれのスタイルを確立されたお店がたくさんある、パワーのある街で始めることへのプレッシャーはあります。
ルダイ
そうですよね。
サノ
でも実は、特別な存在になれなくても良いよね、と思えてきた一面もあります。
以前は、素敵なお店や人に対しての憧れが強い分、いざ自分がやる時に自信がなくなってばかりでした。
ルダイ
はい。
サノ
最近は、自分はそんなに特別な人間じゃないんだからそんなに力まなくても良いと思えてきたんです。
ダンスに打ち込んでいた頃に味わった、身の程を知る心境と言いますか。
スターのような輝く存在になりたい、ならなき ゃだめだと必死になっていたのですが、そのせいでビクビクして視界が狭くなるよりも、もうちょっと力を抜こうか、とパートナーのアヤカちゃんのおかげで思えるようになりました。
ルダイ
アヤカさんのどんなところからそう思えたんでしょう?
サノ
アヤカちゃんは何もカッコつけないんです。そこがかっこいい。全く着飾らないところが僕とは正反対で、すごく刺激を受けています。
ルダイ
なるほど。僕は、肩の力が抜けた今の状態の方が、オンリーワンのサノさんに、オンリーワンのCLEHAにより近づくんだろうなと思いました。
サノ
前人未到、オンリーワン、特別な存在。そういったものに憧れていたのですが、自分達のやることをしていれば結果的にそうなるんだろうなと思います。
それに、超有名にならなくてもいいんだ、カッコよくなくても良いんだ、ダメでも良いんだと思えるようになったかな。
外からは完璧に見える憧れのお店も、本人たちは自分達のことを完璧と思っているかは分かりませんし。
ルダイ
うんうん。
サノ
そういうことがわかってきて、自分も肩肘張ってスペシャルな何かにならなきゃと思わなくてもいいんじゃないかと。
だからこそ、いい意味で「ネルの自己表現をしたいです」なんてぬけぬけと言えるようになりました(笑)
今まではそんなこと恥ずかしくて言えなかった。
ルダイ
憧れの存在を意識すればするほど、思い描いている姿と自分とのギャップを感じてしまいますもんね。
サノ
そうそう。俺なんかが、と思ってしまいます。
これが言えるようになったのは、「あんたが頑張ったってそんなスペシャルな存在になんかなれないよ」という自分に対しての思いもあるし、同時に僕は既にスペシャルな何かかもしれないとも思うから。スペシャルじゃない人間はいないですからね。
本当に力を抜いて自分が楽しい、好きだと思うことを表現してみようかなと思うようになりました。
ルダイ
その力の抜け方は、いろんな経験を越えてきた人にしかできないですね…。
サノ
そうかもしれないですね、たくさんすごい人を見て何度もへこまないと。やってみて身の程を知らないとそれは分からないですよね。
ルダイ
これからのCLEHAが、ものすごく楽しみです。
(第3回「好み / 自己表現」へつづきます)