第1回
ネルドリップ / 繋がり
ルダイ
今日はよろしくお願いします!今回のインタビューでは、リロのみなさんが今夢中になっていることをお聞きしています。サノさんが今取り組んでいることを聞かせていただけますか?
サノ
僕は「ネルドリップで自己表現をしたい」ですね。
ルダイ
なるほど、ネルドリップ。僕も先日サノさんのネルドリップを飲ませていただいて、とっても美味しかったです。
最近ではリロ珈琲喫茶でネルドリップを提供されていますよね。ネルで淹れ始めたのは今年に入ってからですか?
サノ
はい、そうです。
ルダイ
以前サノさんがネルドリップを始めるまでの経緯を書いたInstagramの投稿を読んだのですが、そもそもネルドリップを好きになったきっかけは、味というよりも、ネルや喫茶店のスタイルへの憧れだったんですよね。
でも最近までネルドリップとは距離を置いていたと。どういったきっかけでまたネルで淹れ始めたんでしょうか?
サノ
はい。ネルは前から好きだったんだけど、残念ながらスペシャルティコーヒーとは相性がよくないんだと思っていました。
だけど最近、喫茶の皆さんとコーヒーの「油分」について話すことがあって。ヒロナさんもタクミくんも、ネルドリップ美味しいですよね、好きですと言っていたんですよね。
ルダイ
油分とは、紙のフィルターと比べてネルフィルターはよりコーヒーオイルのアロマを堪能できる、という意味でしょうか?
サノ
そうですね。それで「あ、やっぱりネルドリップ、良いかも」と言う思いが膨らみ始めて、3年、4年ぶりにひっぱり出してきたという流れです。
ルダイ
スペシャルティコーヒーといえば、豆の個性を生かした浅煎りの焙煎が主流ですが、浅煎りのコーヒーとネルドリップは僕の中であまり結びつくイメージがありませんでした。ネルドリップと聞くと、フィルターの中でもこもこと粉が膨らむ深煎りのコーヒーを想像してしまいます。
サノ
そうですね、僕もネルはスペシャルティコーヒーの繊細なフレーバーを台無しにしてしまうという悪いイメージがあったんだけど、最近になってやっと「ネルにはネルの美味しさがあるよね」と胸を張って言えるようになってきたかな。
ルダイ
なるほど。
サノ
あとは、最近ネルドリップで浅煎りコーヒーを淹れ始めた理由の一つに、 自分の中でパズルがガチッとハマったような出来事があったんです。
東京に「COBI COFFEE」というお店があるのはご存知ですか?
ルダイ
あ、知っています。器や道具が全て作家さんのものを使用しているお店ですよね。
サノ
そうです!20代の頃、東京のコーヒー屋を巡る中でオープンしたてのCOBI COFFEEに出会い、憧れのお店になりました。
ルダイ
ほうほう、そんな時期からご存知だったんですね。
サノ
内装も器も、全てがカッコよくて、こういうお店で働きたいと思っていました。
それから10年弱が経って、つい最近知ったことなんですが…。COBI COFFEEさんで提供されているネルドリップは、当時からWEEKENDERS COFFEEのお豆を使っていたんです。
ルダイ
おお!
サノ
「浅煎りはペーパーフィルターが美味しい、ネルは合わない」とずっと思ってきたけど、僕がかっこいいなぁと思うお店が、自分の好きな味わいの浅煎りコーヒーを使っていて。スペシャルティコーヒーをネルドリップするのは間違いだとずっと思ってきたけど、いいんだと肯定してもらったような心境になりました。
ルダイ
WEEKENDERS COFFEEさんは、サノさんにスペシャルティコーヒーのおいしさを教えてくれた大切なお店ですね。
サノさんがかっこいいと思うスタイルのお店と、サノさんが好きな味を作るお店がつながっていたんですね。
サノ
思わぬ繋がりでした。
こんなふうに、別ジャンルだと思っていたいろんな「好き」が、最近になって一つに統合してきた感覚があります。
でも逆にいうと、ネルでいろんな好きを表現できるようになってきた、という方が正しいかもしれません。
ルダイ
なるほど、別々に捉えていた好きなことを自分で繋げられる表現力が身についたんですね。
サノ
リロで働いてきたことでスキルがつき、知識の幅が広がってネルドリップでも自分の好きな味わいを表現していいんだと思えるようになった。うん、これかもしれない。
ルダイ
いいですねぇ。
サノ
それで、試してみたらできた。その結果、よりネルが好きになってきたんだと思います。
ルダイ
なるほど〜。それはとっても大きな進化ですね!
サノ
はい。ネルでの自己表現、そういうことかなぁ。
(第2回「新天地 / 新境地」へつづきます)