2023年7月7日に5周年を迎えたリロ珈琲喫茶は、
珈琲を深める場所。
2023年8月8日に9周年を迎えたLiLo Coffee Roastersは、
コーヒーを拡げる場所。
リロコーヒーには、まったくスタイルの違う、ふたつの顔があります。
皆さんは、初めて飲んだLiLo Coffee Roastersのコーヒーを覚えていますか?
2016年、僕が初めて飲んだアイスカフェラテは…今でも忘れません。ミルクのひんやりなめらかな口あたり。浅煎りドミニカの、箱に入った高級なイチゴのような濃い赤の甘さ。かすかに香ばしい余韻。脳みそに電気が走りました。僕の知っているコーヒーではない、でもたしかにコーヒー。人は本当に驚くと、頭が真っ白になるんですね。僕はその5年後、リロコーヒーに入社しました。
LiLo Coffee Roastersはコーヒーがポップです。じんわり味わいが広がるコーヒーではありません。一口目で「おっ!」と声が出る、〈はやい美味しさ〉があります。LiLo Coffee Roastersのにぎやかでカラフルなイメージをそのまま溶け込ませたような、リロらしいコーヒーです。
LiLo Coffee Roastersはデザインもポップです。取り扱っているコーヒー豆すべてに、専用のカードを作っています。デザイナーの中谷が一つずつ水彩絵の具で描いたフルーツやお酒のイラストは、コーヒーの味わいが一目でわかります。数年前からコーヒー豆を入れるパッケージも、水彩イラストがはじけるカラフルな袋に変わりました。よもや茶色いコーヒー豆が入っているとは思えない、自慢のかわいいパッケージです。
LiLo Coffee Roastersはバリスタまでポップです。声の大きさにビクッと反応してしまう人もいるほどの、明るく元気な気取らない接客。家でコーヒーを淹れ始めたいお客さんがいれば、どの器具を揃えるか一緒に悩みます。「豆とお湯の比率は1:15がおすすめです。水出しなら豆が60gで…あ、紙に書いておきますよ!不安ゼロにして、家に帰ってすぐ始めましょ!」ここにクールなバリスタはいません。サービス業を超えて、大阪のおばちゃん顔負けのおせっかい集団です。
ポップとは、わかりやすくとっつきやすいこと。明るくて鮮やかなこと。そして、元気で気さくなことです。LiLo Coffee Roastersがポップなのは、何のためでしょうか。とびきり美味しいコーヒーを、むずかしくせず、ただたのしいと感じてもらうためです。以前コピーライターの糸井重里さんとファッションデザイナーの皆川明さんが、こんな興味深い話をしていました*¹。
みんな「物事を深める」ことばっかりするけど、ぼくは「浅める」ことも大事だと思うので。
「浅める」?
もともとは「永田農法」の永田照喜先生が、植物の根を、地中深くに伸ばそうとするやり方を、 「まちがった農法」と言っていたんです。
そうですね。
物事もどんどん深く突っ込んでいくと、だいたいは行き詰まってしまいます。 (中略)
例えば、ミナ*² の洋服のことを、「ずっと着られるから好き」って言ってほめる人がけっこういますよね。
はい。
それって、服の魅力の伝え方としては、「浅めた言い方」ですよね。
たしかに入口のステップは、なるべく軽やかなほうがいいですね。 |
ここでの〈浅める〉とは、〈ポップにすること〉と似た意味だと思います。LiLo Coffee Roastersは、9年前から一貫して、スペシャルティコーヒーを一生懸命〈浅めて〉います。「スペシャルティコーヒーは透明性が確保されていて、焙煎はこうこうで挽き目が…」なんていう話しかたではなく、「カラフルでかわいいでしょ?美味しいコーヒーやから、まぁ飲んでみてや!」と言いたいんです。なぜなら、わたしたちのゴールはお客さんにコーヒー博士になってもらうことではありません。
たくさんの人に、むずかしく考えずコーヒーをたのしんでほしい。そんなLiLo Coffee Roastersです。
「2. 肉でも何でも焼きますとも!」を読む>
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