昨日の夜、
御堂筋を自転車で走っていると
ふんわりイチョウの香りがした。

見た目にはまだ
イチョウの葉も青々としているし
銀杏も落ちてはいないけれど、
ほんのりその香りを感じるだけで
頭の中の情景は、
辺り一面黄色の絨毯が敷き詰められ
秋の装いでショッピングを楽しんだり
美味しかったスイーツの話に夢中な
若者達で賑わう秋の御堂筋だ。

御堂筋でイチョウの香りを感じると
そんな景色がしっかりと明確に
浮かび上がる。

イチョウの香り。

イチョウの香りとは
ギンナンの香りのことだ。

漢字はイチョウもギンナンも
同じ、銀杏。

正直、クサイ。

全く好きな臭いではない。

焼くと随分マシではあるが
生のギンナン単体で嗅ぐと
鼻がもげるし、もげた。

ヒドイにおいだ。

ただそれは、
あの秋の御堂筋の光景を
知る前の話。

あの景色を見た時に
強烈なインパクトがあり
イチョウと言えば
御堂筋が浮かび上がるようになり
そこには常にギンナンの香りが
セットになっているので、
ギンナンの香りで
その光景を思い出す様になる。

不思議なもので、
あれほど不快に感じていたニオイが
今では他の植物にはない
オリジナリティを感じて
僕にとって好きな香りに
なってしまっている。

好きになると
イチョウやギンナンのことを調べたりして
種子植物なのに受精の際に精子を作る
比較的珍しい植物であることや、
ギンナンを食べ過ぎるとビタミンB6が欠乏して
食中毒を起こす可能性があって、
人間にとって害があるものでもあるから
あんなニオイがするのかなとか考えたりとか、
気づくとめっちゃギンナンしてる。

もう焼鳥屋に行くと
絶対ギンナン串は注文する。

ギンナンのニオイ単体だけの印象とは
180度違う捉え方になっている。

他の物事や、
もちろんコーヒーにも
同じ事が言えて、

コーヒーの液体、ただそのものだけだと
取り立てて何も感じなかったとしても
コーヒーを飲んだ時の
情景であったり
空間の雰囲気であったり
人との会話であったり
印象的なものと組み合わさった時に、
香りや味が脳裏にインプットされることがある。

そして、
そのコーヒーの淹れ方だったり
淹れた人だったり
焙煎だったり
生産地のことだったり、
知れば知るほど
どんどん好きが増していく。

コーヒーは、
液体の色が茶褐色で
見た目も良いとは言えず
何の情報もないところからの
ギャップが大きいから
特にそういう好まれ方をする。

色んなものを組み合わせて
楽しみが増すコーヒーは
やはりステキな飲みものだ。

あのコーヒーの香りをかげば
いつもLiLoのあのお店の雰囲気を思い出す、
そういうコーヒーを
創り続けたいと思う。