町が一つになる
 -岸和田だんじり祭-

 

「そーりゃ!そーりゃ!」「カン、カンカンッ。ドン、ドドン。」

大阪府・泉南エリアの岸和田市では毎年、夏の終わり頃になると、町中の至る所からどすのきいた掛け声、大太鼓・小太鼓の振動、そして鉦(かね)や篠笛(しのぶえ)の華やかな音色が聞こえてくる。だんじり祭の音だ。西日本では、祭礼で使う山車(だし)をだんじりと呼ぶ。

岸和田だんじり祭は、関西各地で行なわれているだんじり祭の中でも群を抜いて規模が大きく、旧市地区では各町のだんじり22台が市街を激しく走り回る。直近で見る総欅造りのだんじりは、まるで神社に車輪を取り付けたみたいな迫力だ。

 

とある町でだんじりの「若頭」に所属する山本さんにお話を伺い、実際にだんじり祭九月祭礼を体感するため岸和田まで足を運んだ。

 

 

 

だんじりを動かしているのは、自分だ 

山本さん:だんじりは団体競技。多い町では500人以上の人間が意思疎通して一つのだんじりを曳かな(動かさな)あかん。外から見たら何も考えずに引っ張って走ってるだけに見えるかもしれないけど、実際にやってることはすごく繊細やねんな。

 

––– だんじり祭といえば、重さ約4tのだんじりを激走させながら急カーブする「やりまわし」が醍醐味の一つです。少しのミスで命の危険さえあるだんじりは、相当な練習量が必要になりそうですね。

 

山本さん:そうやねぇ、祭当日は夜明け前から準備して、二日間だんじりを曳き続けなあかんから、まず体力が必要。青年団の子たちは、祭の1ヶ月前ごろから走り込みや、軽トラックにロープを繋いで引っ張る稽古をする。上の人らから叱咤激励を受けながらね。祭は楽しまなあかんけど、当然しんどいこともたくさんある。

 

 

––– 大変ですね…。これだけ過酷なのにも関わらず、毎年毎年、各町に何百人もの曳き手が集まることが驚きです。

 

山本さん:みんな、「自分が参加する町のだんじりを一番かっこよく曳きたい!」という思いが強い。ドワーーッとだんじりが猛進する姿は、やっぱり活気があってかっこいいんよね。まだ小さい小学生も「ちゃんと曳けよー!」って言い合ってるねん。子どもは力を入れても入れなくても影響のない、先頭の方を持つんやけど…。

 

––– その子たちも「自分の町のだんじりの成功は、自分にかかってる!」と信じているんですね。岸和田の人はだんじり祭があるからこそ、若いうちから〈自分たちの町〉に誇りを感じているのだと思います。

 



「祭のため」が自分をええヤツにする

––– だんじり祭に向けて町の人間が集まり「寄合」という会議が開かれるそうですが、祭の何ヶ月前にあるんでしょう?


山本さん:寄合は一年中あるねん。だんじりが終わった次の日から、さっそく、来年の新体制の話をし始める。どうやって資金を集めるか。どうやって人を募集するか。常に話さなあかん課題がある。やけど実際は…半分くらいは宴会になってる町もあるかな。効率的にやれば、二日で終わるんちゃうかと…。

 

––– あはは。事務的な決めごとだけで終わらず、集まって喋ること自体を楽しんでいて素敵です。寄合が居酒屋で行われている時点で、飲む気満々ですよね。その他、後輩にはにだんじり以外の、礼儀なども指導していたりするのですか?

 

山本さんうーん、その辺はあまり厳しくない。普通やけど、強いて言うなら挨拶くらいちゃうかな。俺らも町で目上の人にすれ違ったらこんにちはーって言うし、うちの青年団の子も俺が通ったら元気に挨拶してくれる。

 

––– そこはとても重要な点だと思います。些細な挨拶一つをきちんとしているからこそ、町のいろんな人と顔なじみになれているのですね。

 

山本さん確かにそうかも。そういうものをちょっとずつ日頃から交わす関係の方が、だんじりの話をしなあかん時に、全くの初対面よりも意見を言い合いやすいんよね。だんじりをやってるから、俺は移住せずにずっと地元岸和田に住んでるねん。寄合にも行きやすいしね。子どもの授業参観に行くと、知り合いが20人くらいいたり。もしかしたら岸和田はママ友よりもお父さん同士のコミュニティ、連帯がすごいかもしれない。スーパーに行ったら絶対知り合いに会う。家の水道が壊れても電気が止まっても、だんじりの知り合いに電話して助けてもらえる。そういうのは面白いかな。

 

––– だんじり祭をスムーズにこなすためには、町中の多様な人々とコミュニケーションをとって関係を築く必要があります。最初は合わないと思う相手に対しても「ええヤツ」になって、うまく付き合わなければいけません。その結果、周りが顔なじみだらけになっているんですね!

 

山本さんうん。みんな知り合いやな。だから岸和田には変質者が少ないし、日頃から助け合いができる。岸和田から転出する人の割合は大阪府で最下位クラスなんよ。




自分たちの町

夜のだんじり祭は、昼間の激しいやりまわしとは違った表情を見せてくれる。灯籠を吊り下げゆっくりと町を練り歩くだんじりの主役は、まだ小さな子どもたちだ。だんじりの近くで綱を引っ張る子。だんじりに乗り込み、憧れの鳴り物(太鼓や鉦)の拍子を刻む子。まだ歩けない幼児も、お母さんに抱っこされて夜の熱気を浴びている。日中走り通しだった大人は少しくたびれた様子で、缶のお酒を飲みながら「あそこはちょっとやりすぎたなぁ」と好き好きに喋っている。観光客の姿はほぼなく、ただただ岸和田の人間がだんじりへの誇らしい思いを噛み締めているように見えた。

 

 

だんじりは観光のイベントではない。岸和田の人間が厳しい稽古と面倒な調整、数多の話し合いを通して〈自分たちの町〉の一員になり、本番の二日間で物凄いパワーを爆発させる。これこそ祭だ。

 

 

LiLo Coffee Roastersには、岸和田の人たちが〈自分たちの町〉のために力を尽くすのと同じように、自分とお店、自分とチームの境界線をなくし、〈自分たちのリロ〉のために行動しているメンバーが何人もいる。そういう人たちの行動は、効率的ではない。しかし、〈自分〉だけのためにやるのでは到底追いつかないほどのエネルギーで、楽しさを生み出している。きっと、「自分ごと」の範囲を広げた方が、何倍もパワーが湧いてくるんだろう。僕がなりたいのはこんな人たちだ。岸和田の人たちやリロの先輩に負けないくらい〈自分たちのリロ〉〈自分たちの大阪〉を、もっとパワフルに面白くしていきたい。 


   

 


 

 大阪ブレンド(だんじり)ができるまで

 ■ だんじりのために人が動き、つながる

日本全国いろんな祭があるけれど、だんじり祭ほど人々の生活に染みついている祭はなかなかない。町の人々は年代別に組織を作り、一年をかけて祭の準備をする。

そして、祭が終われば次の日から来年の祭の準備だ。

大人から若者に、先輩から後輩に。教え学んでいるうちに、いつの間にかだんじりを中心として町全体が仲間になっている。

  



 

■「だんじり」から 強いインパクトとリズミカルな楽しさのブレンドコーヒーをつくる

 ここからは焙煎士 中村圭太の腕の見せ所!「だんじり祭」から分かる泉州・岸和田の特徴をもとに、ブレンドの味わいを構築していく。

 

  •  こどもも大人も、各世代がだんじり祭の成功のために別々の役割を担う。
  •  祭当日までの準備・練習・調整をとおして、町の人々がつながっていく。
  • 数百人が曳くだんじりが、迫力満点に走り抜ける。
  • 鉦や太鼓のリズムと篠笛の音色に、祭への高揚が高まる。

 

 


口に含んだ瞬間、猛々しく駆けていくだんじりのように、柑橘のような酸味が口の中いっぱいに広がる。

後ろからじんわり甘さが追いかけてきて、最後は祭の夜のように静かで優しい後味。

エネルギッシュな美味しさを引き出すために、ぜひ熱々のお湯で淹れてほしい。

 

 

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